視界の記憶
ブログでコメントのやり取りをしている方との会話にて、私が愛用している旧ミノルタの標準レンズMC55mm f1.7の話題が出た。
普及型の標準レンズではあるが、コントラストよりもトーンを重視した描写で、ウェットな再現を軸としている。このレンズよりも後期に入ると、解像力やコントラスト重視へとミノルタは設計方針を変えたと思われる。
以下…すべて同レンズで撮影。携帯からのコピーなので荒いのは仕方がない。
一枚目…水戸市那珂川河畔。今から25年くらい前の風景。
犬と散歩に来ていた少年。少年の動感と犬の静かな表情。この半年後、付近は大水害に見舞われて水没してしまう。死者は無かったと思うが、少年や犬は無事だったのだろうか。
二枚目…昼寝する捨て犬。ひたちなか市遺跡センター前。安らかに寝ている子犬。誰かに拾われて天寿を全う出来た事を祈る。
三枚目…日立市駅前の工場群。
四枚目…同上。凄まじいゴーストが逆光で発生するのが、このレンズの特徴である。でも、背景は壊れないので面白いレンズだと思う。
四枚とも、数十年前に私が一眼レフを使い始めた頃の風景。
那珂川の少年も、たぶん今ごろは中年を迎えているだろう。
工場群も整理されて姿を消した。この撮影をした翌日に日立市のシンボルとも言うべき『大煙突』が倒壊。
それが五枚目の写真。よく見ると折れる付近が曲がり始めているように感じる。
この日、私は大煙突の撮影を翌日に回して帰宅。
『明日は煙突の近くまで行ってみたい…』
翌朝、父が部屋に来て『おい、大煙突が倒れたぞ!』という悲報に目覚めた…。
様々に因縁めくが、写真とは本来は記録が身上である証左であろう。




