髪を主題にした能
能『蝉丸』…皇女逆髪・浅見慈一・代々木果迢会
先日、叔母の死去で私は五年以上に伸ばし続けた髪を坊主頭に近くまで切った。
叔母が私の髪を誉めていた事も理由の一つだ。髪を叔母に贈る気分もあったように思う。
そして髪を伸ばして知った事は多々ある。
一枚目…能『蝉丸』の登場人物皇女逆髪。盲目の皇弟蝉丸を尋ねて姉宮逆髪が現れる。彼女は時に狂気し、髪が天に昇るように逆立つ。彼女において美しい碧の黒髪は幻想であると同時に強い憧憬の姿であった。
この逆髪を演じる際に、演者の舞う型に逆髪が髪を手にして撫でるシーンがある。
十年前くらいに私が『逆髪』を師匠である小早川修師(観世流・芸大卒)に習い舞った時、『…本当に自分の髪を手して眺めたら、逆髪の気持ちは理解できるだろうか…』と考え、阿呆な実践として伸ばし続けた。
髪は女性にとって身体の一部というより、精神象徴の一部に近い。日常を暮らす分身だと見るべき…と思う。皇女逆髪においても、やはり美しい髪が幻想であっても、彼女の生命への主題に近いように感じる。そこに心の襞が繋がっているようにも思う。
蛇足…好きでもない男に頭をポンポンされるなんて、女性を怒らせるだけ。
逆に、意中の女性がいたら、必ず彼女の髪は誉めるべきだな。話は、まず…そこからだ。
えっ、彼女が坊主頭だったら…?
それでも、『また、きれいな髪が生えてくるよ…』と言葉をかけてあげよう。
