100円で幸せを買う
昨日は東中野で夕方過ぎまで舞台の撮影補助。実は、先日に左手を打撲裂傷を負い、ままならない痛みと不自由を抱えつつ何とか勤める。
撮影終了後、真っ直ぐに帰宅するのも退屈なので中野にある中古カメラ店まで散策。舞台撮影に使う機材を見る。
そして最後は、お決まりのようにジャンクカメラ店を物色。狭い店内は相変わらず私と同類の客達で混雑する
。
せっかく来ても目ぼしい物が無ければフィルム一眼に使うリチウム電池(市販品より安い!)を数個買って帰るつもりだった。
以前よりはジャンク価格も底を打ち、若干値段は高めである。私の隣では何やら転売業者臭い男性等が横でマミヤの2眼レフとニコンの交換レンズを見ている。
ジャンクカメラのネット転売で小遣いを稼ぐなんて記事が週刊誌に掲載されていたが、そういう経済行動もカメラ趣味から派生した一つの現象なのだろう。
そんな状況下、私も棚の下に『目当て』を発見する。
一つは『コニカC35EF』でコンパクトカメラに世界で初めてストロボを付けた画期的機材。まさにカメラを変えた一台、しかも傷一つない美品が100円というプライスなのだ。
発売当初、誰にも簡単に使えるカメラであることから普通にスナップメモとして使用された。この機能を最大限に引き出して愛用した感銘深い写真家がいる。その写真家とは一人の老婦人で、自分の暮らす山村がダムに沈む事を知り、その有り様と毎日の暮らしを黙々と撮影した。その数は七万枚と聞く。それほどに撮影を重ねたのは、先の大戦で戦死した夫が帰宅した時に沈んだ村を教えてあげようと始まった撮影なのだとか。そこに撮影本来の基本姿勢があるように思う。
100円という底値、カメラ史の歴史的価値、一人の写真家への敬意もない交ぜにして、私はコイン一枚で幸せを買うのだった。

