田植え前
田植えが始まった風景。
米作りに必要なもの、それは質の良い水、寒暖差のある気候、盆地、そして何よりも勤勉な労働力。
その労働力を正当に評価する代金。
一つ、一つが失われつつあるようにも思われる。もちろん、そう考えない人もあろう。
『棚田』を人は美しいという。日本の風景美として取り上げた写真も多い。
されど、田んぼである。ありきたりの田畑にある水田、景勝地の水田ともに人が育てている。
やはり、結局は人なのだ。法律とか金銭では補えない労苦があって田は育つ。
そこを差別化して眺める、あるいは均一な価値観でとらえるのかで、米のあり方が変わるのだ。
田植えを準備する老人と、しばし立ち話をする。
水を待ち望んでいた蛙が、どこかで鳴いた。

