訂正…演武会 | HOODのブログ

訂正…演武会


帽子に着物姿が、私の曾祖父熊松。隣に立つ洋服の紳士は画家浅井忠。


昨日、都内某所でとある剣術流派の演武会を見てきた。

私には武道の経験は、ほとんどない。足を運んでまで演武会に対する興味は薄かった。


今年の夏、ネットで自分の曾祖父を検索にかけてみて知った事実が幾つかあり、その中には曾祖父がある流派の武術を習っていた記録が出てきた。

それをツイッターで呟いたら、その流派を稽古している方からアクセスがあって、今回案内を受けたわけだ。


肉眼で、初めて見る居合いや組太刀は、なかなかに面白かった。いや、刀や木刀を取る所作など一つの流れの中に納まっていて、そこは私が稽古してきた能とも一脈通じる。

組太刀は、真面目に稽古して互いの動きを合わせないと怪我をするだろう。何しろ剣道と異なり防具がない。さらに真剣を用いた居合いは、使う手に緊張をもたらす。
太刀の打ち込みも、剣道とはかなり筋が違うようで、太刀を振りだした一瞬に、差を作りながら相手を打つ…そこに剣術の妙があるように見えた。

身体や腕の筋肉を鍛え上げ竹刀を振り込む動作とも、少し印象が違っていた。
私の曾祖父熊松は、相当の名手で藩下に勝てる相手がいなかった…と言われたらしいのだが、残された写真を見る限り、いくぶん痩せ型の気難しい顔をしている。逞しい豪腕ではない。


勝海舟著の随筆『氷川清話』には、幕末に土佐藩の岡田以蔵に私的警護を受けて、浪士に襲撃された際に危うく難を逃れた記述がある。

以蔵は、相手を一閃の太刀で斬った…その凄まじさに海舟は、以蔵の殺人剣を諌める下りがある。

岡田以蔵の手筋が、いかなる技なのかは海舟が触れていないが、昨日の居合いや組太刀を眺めているうちに、見えてきたシーンがあった。


闇夜、海舟と以蔵が歩いて行く。

ふと、前方に三人の侍が現れ刀を抜き放ち走ってくる。その間は三間足らず。もはや、海舟が抜き合わす間はない。

しかし、勝の後ろには警護している以蔵がいる。

以蔵は彼らの様子に備え、すでに鯉口を切りながら両者の間に割り込む。
間髪、一人が割り込んだ以蔵に構わず切り込んでくる。以蔵、太刀を抜き流しながら合わせ、踏み込み返すままに一人目の首頸動脈を切断。
瞬時に足の体を入れ換えて、二人目に備えながら一喝すると、彼らは逃げ去っていった…など勝手に想像を巡らした。


特に興味深いのは、攻めではなくて、常に受けて凌ぐという形が基本であるらしい…曾祖父が習った太刀技も、おそらく城内など狭い室内での戦闘や護身術に近い型であったと思う。

能でも、体や足を入れ換えたりする型は多い。演武を拝見しながら、まだ自分に足りない動きや自覚していない使い方があるんだな…と少し自覚した。

私の江戸幕末の先祖達には、他にも剣術の名人がいるのだけど…どうやら、その血が騒ぐのか。