言うに及ばず。 | HOODのブログ

言うに及ばず。


今年も残り僅か数日だ。こうやって毎年、この時期に一年を振り返る。

先の震災以来、日々の過ぎるのは早くなり、また世相も大きく潮流が変わった。

その潮目について私は、納得の行かない事が多い。しかし、潮流に沿って人々が航海の道を選ぶのならば仕方はあるまい。私とて船から降りるわけには行かず、海に放り出される覚悟で自分の理念や意思を通すのは、かなり難しいだろう。


人は、次第に年齢を重ねる度に守るものは増え、失いたくない何かを背負う。特に男性は社会的鎧を失えば『男のプライドが立たない』なんて云う向きもある。


自己防衛から他者攻撃が目に見えて激烈となり、知人関係を崩壊させてゆく…とまあ、その頃には中高年の域で本人に忠告する人もいないのだが。


今年一年を振り返って、実感した事実がある。この年代になれば誰にも訪れる『老いの影』だ。

ある時期には身体で感じ、表現可能だった世界があった。それが、私も終わりつつある。つまりは『老い』の姿なのだろう。
『老い』により失ったものは大きいが、ようやく終わりが見えてきた安心もある。
しかし、自分のために自分で経を唱える、そういう愚かさはない。ただ、自分が消えた世界を表現してみる…その結果、ずっと生命を保つ場合もあるはずだ。


『クリスマスキャロル』に出てくる主人公は偏屈で孤独な老人だが、自分が消えた世界を受け入れた事から、一つの悟りを得ている。

悟り…万物を肯定する喜びに近いのかも知れないが、それは他者に向けて放たれた言葉があって初めて、発した本人自身にも与えられる感覚なのか。

ある事象に際して『これが正しい』と私が言い切る場合、ささやかな悟りですらも、遥か雲上に等しいのだ…とは思う。