謡本 | HOODのブログ

謡本

HOODのブログ-mini_131107_2004.jpg

いわゆる『謡本』という書籍である。

時に楽譜となり、詞章を記した台本でもある。

観世流大成版謡本五番綴…とも云う。
謡曲を五番組にして
四十数冊あまり。私は、これを学生時代に古物市で五千円で入手した。

しかも…この版は昭和十八年五月とある。
そうだ、太平洋戦争最中に作成されたロットである
日米が南ソロモン海域で血みどろの戦いを繰り返していた時期だ。

まだ物資が尽きる前に職人が綴じた本であり、戦時の空襲や戦後の混乱にも廃棄されず、私の手元に来た。
和紙による製本の正しさ、経年変化に対応した強さは趣味の本とは思えないほどの『伝統工芸』である。たぶん、傍らで私の人生を看取るのは、この謡本達であろう。

しかし、一つだけ問題を抱えている。

能には天皇や皇子が主人公の作品が幾つかある。その代表が、能『蝉丸』であり『玄象』(上とも。げんじょう)という曲。

蝉丸は詞章が変更され、玄象は…曲自体がない。当局や軍部による統制で削られたのだ。

天皇家を役者が演ずる事は『不敬罪』である…そういう権威を具象した証として、当時は制約を受けていた。

その名残が、この謡本等にはある。

※玄象は優雅かつ不思議な曲で、村上天皇がシテ、竜神がツレ。主題は琵琶と音楽をテーマ。詳細はまた。いつか。