『少年H』と父達の世代(戦前の少年達)
珍しく父からメールが来た。
『映画少年Hを見に行った』…と、どうやら夫婦で映画に行ったらしい。
両親は原作者妹尾河童と同年代であり、戦前戦後をリアルに体験している。
私は同時代に生きた両親から見て、戦後の俳優達が演ずる時代性に違和感がなければ、作品は合格点なのだろうと思っていた。
だから『映画に違和感無かったかな?』と質問してみた。
『時代が上手く描けていた。水谷豊も良かった』と父からの返事。
この妹尾河童著『少年H』には、作品を揶揄する意見や反発もある。内容を批判した書物まであるようだ。
特に『間違いだらけの少年H』を記した山中恒は有名である。
昭和六年生まれ…とあり、昭和五年生まれの父や作者妹尾河童と時代は共有している。
私は、あの時代については経験者同士が記憶から体験感覚を角突き合わせて、意見を交わすのを否定はしない。将来に選択など皆無になった少年達の『時空の相違』は仕方の無い事だ。
その環境によって体験した記憶や答えが違うのも、まさに時代であろう。
山中氏のように軍国少年になる子もいれば、土産に貰った欧米の工業製品に触れて日本の工業に絶望した父みたいな少年もいる。
それぞれに動員や空襲体験も違うだろうし、周囲の大人達からの影響下も強い。
だから、せめて死ぬ前に思う様に意見を交わせ…と言いたい。(何と言う親不孝者か)
しかし、戦後生まれの私達世代が、彼らをネタにして『老人を嘲笑』するとすれば、知識としては貧しい。
むしろ、今の時代性や問題を探ってみる方が建設的であろう。
実は、それが一番に際どい知識パズルになったりするものだ。
