ある一家の納涼
暑い夏だった。
久隅守景筆『夕顔納涼図』江戸時代・17世紀。
この絵世界に何か文句を言う人がいるとしたら、私は哀れな人なんだな…と思う。
時代、時空を越えて名画に相応しい作品。
家族の姿、人の生活とにある幸せとは、こういうものだろう。
江戸初期に、その答えを見いだした画家の眼差しがある。
端居する夫とおぼしき男性の存在、肉体的な妻の裸体の曲線、そして無邪気な子。
『幸せ』を写し描くとは、こういう事だ。
私も、そういう写真が撮れたら…と願ったりする。女性のヌードなんて、その本人に絶対の未来があって幸福感みたいなものが、どこかになければ賎しい裸体でしかない。
描く側も、描かれる側も『幸せ』が両立して完成した作品、それが『納涼図』。
この夏の猛暑も、こういう家族には夏イベントでしかなかっただろう。
ふと、この夫と話してみたいと思ったり、あるいは、この妻の手料理も良いな。料理ができるまで子供と遊ぶか…。

