蜘蛛の糸
夜道を歩いていると、顔にモヤっと何かが貼り付く。
ぺタリと絡み付くように幾度となく、道行く中に繰り返される。
歩きながら顔を撫で振り払う。
蜘蛛の糸だ。
どこからか、夜風に糸を流しているのだろう。
彼らは、そうやって糸を流して巣を張る。
聞いた話では、東北地方である種類の蜘蛛は糸を風に乗せて空を飛ぶ…という話を読んだ事がある。
ちょうど凧の要領らしい…。
夜空を蜘蛛が飛んでゆくというのは、不思議な感覚がある。
ふと、hideの『ピンクスパイダー』を脳内再生してみたが、少し違うな。
むしろ、芥川龍之介『蜘蛛の糸』だろう。
一人の極悪人が地獄の血の池に堕ちた。
彼が獄卒達に叩かれながら苦しむ様子を
、極楽浄土の池の淵から釈迦が見ていた。
極悪人は生前、一度だけ蜘蛛を助けた事があった…釈迦は池の蓮葉にいた蜘蛛の糸を地獄へ垂らす。
万人、熟知の話だ。
釈迦にとって、蜘蛛と人の命は共に等しく差はない。
命に差をつけているのは人間社会である。そこに執着とか罪業が生まれる。
釈迦は無二だ…命は等しい。
悪人が昇ろうとした糸は、また彼が人間の執着と傲慢捨てきれず、その重さに『ふつり』…と切れた。
