マイルストーン
昭和の日本映画における巨匠としてマキノ雅博がいる。
この監督の下で育った俳優、女優は多いが、その一人が山田五十鈴だ。
若くして銀幕にデビュー、日本的な顔立ちと演技力で大スターなった。
だが、もとから名女優であったわけでもないらしい。
しかしながら、十代で若手スターとなり、彼女は天狗になったようだ。
そこへ次回作の監督がマキノ雅博。
山田の奔放振りに業を煮やし、ついに『あんな下品な娘は追放しろ!』と言い出した。彼女の才能に惚れ込んでいたから、出た怒りだったのだろう。しかし、巨匠の怒りは周囲を震撼畏怖させた。
代わりの監督を名乗り出る人物は誰もなく、企画は頓挫寸前に製作会社は困り果てた。
ついに山田自身がマキノに頭を下げて、詫びを入れた。ただ、山田五十鈴が偉いのは、ここから女優業に邁進した事だ。
後年、テレビ番組にて『あの時、本気でマキノ監督に叱られなかったら、たぶん私は消えていた』と山田五十鈴が述べているのを、私は見た記憶がある。
私にも似たような経験がある。その信頼に答えているかは不明だが、いくつになったから終わり…という事ではない。
私が死ぬまで答えを探そう、と思っている。
