昼下がり、早めに部屋に戻る。
目眩がするためだ。
布団へ伏して、ぼんやりと思考する。
気がついて寝返りして、仰向けになる。
右手に何か握っている感覚があった。何もないのに、確かに手の平に…ナイフとか短刀など切り裂くような道具。
熱かな。また風邪?
ぁあ、この感触は。
『扇!』
浅い夢を見ていて、舞台で仕舞の地謡を謡う内容だった。
ところが、どこからか民謡のお囃子と合いの手が入り、我々は謡出しに失敗…釈然としないまま、舞台で沈黙しているのだった。
それで、扇なんだな。
やはり風邪か。
ラボに注文を出していたんだ。受け取りに行かなきゃ。