『シベリア』代々木能舞台…写真屋の独り言…弐
演劇『シベリア』のゲネを見て、突然に記憶がプレイバック中。
今から二十年も昔。その高田馬場にあったバー…元バーと言い直そう。その老人の奥様が、実質は経営していた店なのだ。
昭和三十年代までは若い娘達を雇って切り回していた。オイルショックの時に、奥様は店を一旦閉店を覚悟。彼女たちを全員…解雇、ではなくて…なんと、全て奥様が選んだ男性に嫁がせたのであった。
そういう奥様なので、地方出の中半端な学生の私などは、適度に扱われていたのだが、それでも通った時期があった。
私は、奥様…正直に言えば(婆さんだが…)、ママさんに教えられた事が多々あった。
曰く…良い男とは、金を稼げる男に尽きる。稼げない男、貧乏な男は女を不幸にする。
曰く…人の心は読むもんぢゃない。そんなの怖いだけ…やめなはれ。
曰く…○○さんは、良い飲み方をしている。ずっと年を取っても、そのスタイルを崩したらあきませんでぇ。
他にも記憶を辿れば、まだあるだろう。
だが…。
ある雨が降っていた晩だった。。
客足もなく。私と奥様の二人きり。
私はね…若い頃は貴方と対等に会話できる立場やなかった。そんなん、絶対にあかん…そんな世界に暮らしていた女だった。戦後、主人と一緒になって、何もできへん人だけど、あの暮らしから出られたのは、主人のおかげ…と、問わず語りの一言が、今も深い。
夜は、時を縫い直しながら続いてゆく。
