酒と友
梅雨寒だ。
さすがに体の動きが鈍い。
少し前は必ずいずこかの飲み屋に立ち寄ってゆくのが癖であった。
小雨が降る夜は酒…そういう感覚が支配していた。
消極的な禁酒を始めてから、次第に酒席からは足がが遠くなり、ひっそりと部屋で過ごす夜が増えた。
酒が入らないからといって、特に健康的になったわけではない。
思えば、酒が恋しいというより雨夜の人恋しさであろう。
それでも、ふと思うのだ。年老いて酒が飲めなくなる、あるいは美味しく感じなくなる…というのは少しばかり耐えがたい。
友もなく、誰からも酒に誘われなくなるとしたら、それも悲しいものだ。
では、お前の言う酒や友とは何だ…と問われれば、それは『鼓をポンと打つようなもの』…と思っている。
そこに意味などない。ただ『ポン』と音か響き、再び静寂に沈む。その繰り返しであったり、一度限りの共鳴であったり。
しかし、意味は持たない。それが酒と、その友だと思う。
