物の怪
旅先での、ある夜の事だ。
隣家の屋根も包み込むような濃い霧が闇に流れていた。
『ぁあ、珍しい事もあるものだ…』と、遠景に霞む灯りと夜景を眺めていると、突然に隣家を挟んだ横道あたりから『クァ!』と何やら鳴き声が上がった。
たぶん蛙だろう。しかし…少し不気味だ。
しばらく耳を澄ますと、再び『クァ!』歩くような速度で移動しているようだ。
人が歩く速度…蛙がか?
次第に、こちらへ近づいてくる。
三度『クァッ!』
と闇を斬り裂くような鳴き声に変わった。
『クワァ!』
ついに隣家の角を曲がった…。
私は突然、ゾッ~と背筋が寒くなった。
しまった…これは、たぶん物の怪だ。
部屋に逃げ込むのも良いが…と、とりあえず継ぎ接ぎで読経を頭に念じた。
信心がないので、当てにはならないが…。
少し小さく、『クァ』と鳴き声上がった…が、今来た道を戻ってゆくようだ。
次第に遠ざかる怪かしの声…。
誰もが、本当に妖怪、物の怪など存在しない…と思っているだろう。
しかし違う。実は、彼らは時に動物や鳥、あるいは人間に姿を変えて人の隣にいたりするのだ。
ほら…ね。
Ψ(ΦωΦ)Ψ
