さようなら…また来年。
心待ちにしていた桜。
ようやく桜に間に合った。肌寒く風が吹くなか、雨に桜が散ってゆく。
桜の楽しみ方は人様々で良い。
以前、雨が降る上野公園不忍池で、一人桜の下に弁当を使いながら花見をしている女性をいた。
彼女の横顔が、雨に散りゆく花を見ながら、とても楽しそうに見えた。
そして、桜には人を狂気に誘う力がある。散りゆく花びらに、人は心の中で何かを啓発されたりする。
桜が咲くのは、来年の花芽が幹のなかに準備された事を告げる、植物としての生命活動の証明なのだそうだ。
物言わぬ彼らだが、将来に備えて生きているのだ。
それは散りゆく寂しさより、次が育ちゆく喜びこそが、花を散らす真意なのかも知れない。
散りながら、高らかに笑っているのだろうか。
私は、桜並木や公園に好きな桜の木を見つけて、その木の下へ季節ごとに通う。毎年、通う事で自分の無事を桜の花へ報告し、また来年の再会を約束する。
私は、これが桜の楽しみ方。
また来年まで…さようなら。


