迷
能『逆髪』シテ清水寛二
未だに能を撮影しながら、つい迷いが生じる。
何を迷うのか。
能役者が演じている型や舞どころを、いかに切り取って撮影するか…なのだが。
私の迷いは、弱気な自身の性格もあるだろうが、客席…能では見所(けんじょ)と呼ぶ。
能のシーンに合わせて、その見所内を移動しながら撮影すべきか、定まった場所を一カ所と決め撮るべきなのか…なのである。
撮影者は能においては邪魔者だ…というのが、学生時代からの私の見解であった。
気配も姿も全く感じさせない撮影者こそ、能楽写真のあるべき姿だ…と思うからだ。
静寂を必要とする能において、(移動する)という作業、行動は迷惑に違いない。
『これは仕事ですから…!』と言い訳を繰り延べても、その撮影行為は客とって全く無関係である。
明日は能撮影がある。
その能『俊寛』は、まさに移動を必要とするシーンがある。撮影者にとって、切り取らねばならない場面があるのだ。
ゆえに、今から迷う。
いったい、私はどうするつもりなのだろう。
決断は一つの人生を左右する。『第一義』とは、こういう時こそ大切なのだ。
と、オチも何も見つからないままに…告知を一つ。
急な明日の事で申し訳ないと思いますが。
9月23日。
能『当麻・俊寛』
響の会主催。
於、宝生能楽堂。
13時30分開演。(12時30分開場)
是非、お運び下されば幸いです。
