年中無休
六月に開店した近所のラーメン屋が水曜日から、店の知らせも掲示されないまま休業中。繁盛していたので、雇用しているスタッフの夏休みだろうか。
今日は土曜日。
本日あたりから、営業しても良さそうなものだ。
東京の神田明神近くに『江戸あられ竹仙』と看板を出している煎餅屋がある。
『竹仙』は、私が小学校時代から訳あって通っている煎餅屋さんで、東京の煎餅らしい味わい深さとご主人の人柄に魅力を感じてきた。
ご主人氏は、昭和二十年代に店を出して以来、休んだ事は肉親の葬式で一日だけ…『お客は、いつ煎餅を買いに来るかわかないのだから店は休めない…』と、箱根と隅田川の向こうへ行ったことがない一徹さだ。
何事にも媚びず奢らず、いつ店に行っても気持ちの良い空気がこの店にはある。たぶん、これが本当の江戸気質の信頼というものだろう。
池波正太郎の作品『鬼平犯科帳』に、加賀藩邸横神田明神近くに住む絵師『中村竹仙』という人物が出てくる。
私は、作家が店の名前を作品の人物へ転用したのだな…と、密かに思っている。
変に誤解されては困るのだが、ご主人は池波作品の時代劇に出てくるような渋い脇役の風貌でもある。
この夏は、まだ店に足を運んでいない。
何しろ、先の大戦では兵役に就かれたご主人だが、猛暑にお変わりはない事を祈る。
