どうにも変わらない
何も考えずに筆を走らせていて、ふと読み返すと…相も変わらず字が汚い。
字が美しいというのは、顔が美しいと思われるに等しく評価は高いはずだ。
こんな事を書いていたら、無関係に子供時代の記憶が甦った。
幼い頃に育った町の駅、貨物ホームの風景である。
近くの山々から運ばれてきた石灰岩が駅に積み出されて、いつも白っぽく周囲の家や商店が粉を吹いていた。
黒い貨車とトタン屋根に降り積もった石灰。その貨物駅周辺だけは、言いようのない白く汚れた空気が支配しており、他とは異質な様相だった。
しかし、あの様な風景も、現在の日本からは消えているだろう。
どの街も美しくなり、人々の雑駁な生活感も失せた。あの粉っぽく石灰まみれの街角も、今ではガレージだけが広がっているだけだ。
それでも、私の字は変わらずに子供の時から下手くそである。人に見せる術もない。美しさとは無縁である。
人生の中、どうにもならない事が人間には一つや二つはあるものである。だが、私には少し多すぎるようだ。
