祖母の手
最近、私は冬の寒さ対策で浴衣を着て寝ている。これは父方の祖母が夫である祖父に縫ったものだ。
昨年、実家の整理をして押入から出てきた。
だから、祖母が縫って数十年以上は経ているはずだ。
出てきた時はカビ臭かったが、洗濯をして匂いは抜けたようだ。
この浴衣を着て、朝方に居間で新聞を読んでいた祖父を、記憶の中に私は淡く覚えている。
既に、一度脳卒中を経験して老人めいた風貌であって、父兄弟に厳しかった面影はなかった。祖父は孫である私が可愛いだけだったと思う。
その可愛い孫が、後に同じ浴衣を着て寝ているとは夢にも思うまい。
しかし、驚くべきは祖母の和裁技術である。和裁に関しては戦前の主婦が得る知識の域を出ていないと思われるが、卓越した針仕事は、さすがに『明治の女』である。
『昭和の小娘達』とは違うのだよ…と内心思っていただろう。
こうやって祖父母の残した浴衣で冬を越す。さびしくなった私の周りにも、すこしだけ暖かみが残っている気配がする。
