能から学ぶ。『位』のかたち。 | HOODのブログ

能から学ぶ。『位』のかたち。

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仕舞『邯鄲』若松健史

どんな場合でも誠実に舞台を勤める。
手を抜かず、今まで積み上げた事を丁寧に実演してゆく。

しかし、それが経験上で一番難しいのだ。
誰もが、自分の能力を高めた処に求めたい、世の中は成果主義で溢れているのだから…地味な仕事で一生を埋没したくはない。

恣意的に、都合主義で小さな仕事を軽く扱い、日々はぞんざいに終始して忘れてしまう。

そんな愚かさを戒め、身をもって教示してくれたのが先月に最後の仕舞『邯鄲』を舞われた観世流能楽師若松健史師であった。

今更、あの日の舞台を、私が述べる必要もないのだが、あの舞う姿こそ人生の『手本』の一つにしたいと心から思った。

正しく舞う、その主題の『位』を正しく描くこと。
それは永遠の真円であり、絶対の三角形でもある。

まもなく、私も老境に入る。老残というに相応しいであろう。それは、もの凄く汚らしく惨めかも知れない。鏡に映るように姿は美しいと思いたいが、何も見えなくても、その様を背負って誠実に生きる事が大切なのだ。

怠惰な日々に、私は今日の言葉を忘れてしまうかも知れない。実際、私は能に関しては素人だし、一応は舞台写真家と言えども微々たる存在だ。

それでも、『誠実に勤める』というあり方を思い出せるようにと願う。

一日の中で、一瞬でも良いのだ。