天地の鏡 | HOODのブログ

天地の鏡

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能『野守』作り物(塚)

鏡を使う、あるいは見るというのは人間だけで、神や鬼、霊体の類は鏡を見ることはない…人が鏡を見るのは、自分の姿ばかりではなく、その心を写しているのだと云う。

今日、撮影に伺った能『野守』には(じょうはりの鏡)という大切な主題を担う道具が出てくる。
この世の全て、天から地獄までの有様を、その万象に映し出す鏡と考えられている…そんな鏡だ。

では…その鏡って何か、もう一度考えてみた。

観世流謡本等を見ると、『それは鬼神の鏡なれば如何にして見すべき…』と、鬼神の扱う鏡と称してはいるが、詞章の全体の含みとしては、より宇宙的な広がりを感じさせたりする。
それは、鏡に天界から地獄まで映し出す無限大な空間を描く力…例えるならば鏡自体がブラックホールみたいに、向こう側ある数値や質量が最大値という重さを、野守の鏡は与えられた存在感ではないのかな…。

そういう意味では能『野守』は若々しさより、老体的な重厚さが似合う曲なのかも知れない。