芥子の香り
…あやしう われにもあらぬ御心地を 思し続くるに、御衣なども ただ芥子の香りに染みかへりたり…。
源氏物語『葵』
どうして…身に覚えもないのに、芥子の香りが衣の奥深くまで…(髪や肌、体の奥まで染みついている…)
光源氏と六条御息所の恋は、御息所の深く秘めた慕情と醒めた源氏の心象によって、深く断絶した男女の世界を描き出してゆく。
病身の正妻葵の上に、生き霊と化した御息所が憑依して『あぁ…懐かしい』と妻を見舞う源氏に語りかける…私は、この辺りの描写が読むほどに切なく、二人の女性が哀れに思えてくるのだ。
果たして、どちらの心が語りかけたのか。二人が相乗して光君に『恨み言』を投げかけたとも言えるのではないか。
また、源氏の正妻であり権門の娘である葵の上から受けた仕打ち…『葵祭』での車争いでの屈辱は、元東宮妃である御息所にすれば容認せざる恨みであった……と、前置きにしては長い書き出しをした。
源氏物語における御息所について述べた記述は、すでに無数にあるし、少し古文が好きな方ならば一応熟知の事だ。
能『葵上』も、能に興味がある方ならば一度は見る機会も得られているだろう。
こんな蛇足な私のブログであるが、しばらく私見も含めて…(私見ばっかだが)気ままに『御息所という女性』考えてみたい。
