花と呼ぶ
昨日に続いて『源氏物語の植物』広川勝美著 笠間書店。
この本を改めて読み返すと(学生時代は使いこなせなかった)…。
紫式部が花を愛でる視点とした一つに、他より遅れて咲いた一輪の花…にあるらしい。
遅咲き、と言うべきか。他が枯れた後に一輪咲く花を描写する。あるいは枯れた花、萎れた花に描写の妙を感じたのか。
…時ならで今朝咲く花は夏の雨に しをれにけらし匂ふほどなく…賢木より…。
この風景からの余情を、一人の女性が感じ取り、彼女が主体となって文章に残したという作業に頭が下がる。
『花』という概念を演劇にもたらしたのは世阿彌であるが、その規範として裏打ちしたのが平安期の女性作家の作品群であったのだろう…。
紫式部が述べる『花』とは、早咲きもあれば遅咲きもある。また若木の花、老い木の花…そういう文学視点から止揚して、後代に演劇思想に高められたのだ、と。
それにしても、紫式部は凄い。
彼女は、我々の生活や恋愛まで、当時から見通していたように感じてならない。
