能『蘆刈』の話…壱
昔々、とある村にあった二軒の家で子供が生まれた。
運定めの神が、『男…笠、鎌一本、女…塩、米倉』と言い残して消える。
この話を聞いた男子の親は、女子の家に話を持ちかけ縁組みをする。やがで、二人は夫婦となり、お告げのとおり家は富を増した。だが、男は妻の運とは思わずに女を家から追い出してしまう。
追い出された妻は、行き着いた先で再び富を得て裕福になったが、元夫は零落して笠売りに身を落としていた。
ある日、その元夫と再会した妻は言葉をかけるが、元夫は驚愕のあまり泡を吹いて死んでしまった。
幾つかに分派した『運定め…蘆刈』説話は以上の話に要約できる。
別れた女は富貴の身となり、男は運を失い貧してゆく。
特に寓話性を感じる展開ではないが『運定め』という主題が、男より女を上位にしているところが興味深い。
大和物語
『君なくてあしかりと思ふにも、いとど難波の住みうき』
大和物語では、この和歌を縁にして、再度結ばれて別離した夫婦は連れだってゆく。
『運定め』の説話は、変遷や修正を加味して、終章は幸福譚となる。
『大和物語』では、和歌を起点とした周辺に当時の時代性や文学感覚が発揮されている…地方の説話が収録され、『都文化』で編集読み物化した結果だと言えよう。
