人への伝承文化
昨日、代々木から南新宿界隈を歩いて感じたのは、見慣れた昭和の風景が残骸のように朽ちて行く風景でした。
アパートや古い住居が廃墟のように冷たく、置き去りになってゆく。そこに、都会に背を向けるように老人が独居していました。
地方、都会に区別無く老人には行くところがない…一部の富裕層を除いて、老人には住むところを変えられない困難があるんですね。
私は建物が廃墟に朽ちて行くのは、風景から眺めた時間現象の考察として好きです。しかし、人を廃墟化してしまう状況は文化の終焉を招く危険を感じるのです。
私は、能や歌舞伎などは新旧世代の情報を、混交を繰り返しながら継続する構造だと見ているので、人の老いを切り捨てる社会は大切な古典文化土壌を滅ぼすと考えるからです。
能『姨捨』は、月の光に埋もれる老境を美しく描いています。
老いは…確かに醜いが、そればかりが老境ではない。
そういう意識感覚を失うと、単なる姥棄山に国全体が成り果てる予感がします。

