女性は小町である
能『井筒』山中一馬
ブログネタで男性の『老い』について私見を書き込みました。
では、女性の『老い』は…?
能の作品で『卒塔婆小町』という老女能があります。
曲詳細は省きますが、梗概は『老女にとりついたまま離れぬ青年貴族恋の執念』…舞台の表層だけを眺めると、異質というか奇態ですよ。主人公の婆さんが若い頃に振った青年貴族の執念が、未だに憑いているって…これって、婆さんの思いこみでしょうか?
この老婆が物乞いする様は、人間臭くて能の『幽玄』などとは無縁の体ですが、そこへ突然、青年貴族の執心が憑いてきます。すると…どことなく男性的で若い貴族風へ肉体も変化する。なぜ、二人のそれぞれの過去の執心が、このような姿に表現されるのか…?
そこに女性の『老い』の深さを感じます。若い時代の肉体の記憶が時として精神を支配し、過去の恋慕の情を鮮明にしたりする。
これは能『井筒』の詞章ですが、老いた身でさえも『我ながら懐かしや…』と恋慕する心象を描くシーンがあります。
同様に、この老女の身体も青年の執念を借りて若返ってゆきます。
実は肉体の深層に、少女時代から精神を支配している装置がある…それが女性の根本的に男性より強靱な『老い』であり、ゆえに揺らぎも激しいのだと思います。
