精神障害・発達障害を抱えながらチャレンジしてみるという事

 

人間には向き不向きがあります。精神・発達障害というのも極端に言えば向き不向きが激しいと考えることもできます。普通の人ですら仕事の向き不向きを気にして仕事を選ぶのに、精神・発達障害という強いハンディキャップを持って社会に出ていこうとする人たちは、なおさらに自分の向き不向きというのを意識しなければなりません。

 

では、向き不向きというのはどうやって確かめるのでしょうか。それは実践、実際に働くしかありません。適職診断や心理検査だけで自分を知ったつもりになっても、解決につながらないことがあります。医療機関や支援機関のサポートはありますが、自分を知るのに一番簡単なのは、働いてみることです。仕事探しというのはいつの時代でも冒険で、職業についての向き不向きや、職場の雰囲気が合う・合わないなど、健常者であるか障がい者であるかの区別が関係ないような課題が多くあります。それらを乗り越えて仕事を続けられる経験が、大きな成長の糧になると言えるでしょう。

 

働くということは、必ずしも容易ではないということが忘れられているのではないでしょうか。簡単な仕事でも難しい仕事でも、期待される成果を継続して出し続けるというのが基本になるでしょう。一方でクリエイティブであり新しい価値を開拓するような研究者や芸術家などの職業もありますが、実際は自由である以上に過酷な冒険の連続であり、才能があっても挫折する人は少なくありません。また、芸能人が「売れない間はバイトで生活費を稼いでいた」とたびたび発言するのを見ても、生活の基本としてありふれた職業に就くということは、この社会では重要であると言えます。

 

また、発達障害には特別な才能があるかも知れない、などと言われますが、幻想ではないでしょうか。歴史を見ても普通に働きながら才能を開花させた人は多くいます。普通の人とは違うから何か特別な仕事が向いているなどと考えるのは、暗に社会での身の置き場がない人だと言っているのと同じで、ともすれば人格の否定にも繋がりかねません。

 

障がい者でも健常者でも、自分の生活や人生を自分の思い通りにする自己実現というのは困難や苦労を伴います。逆に自分から社会に合わせようとする経験が無ければ、ほとんど思い込みで作られた閉じた世界の中で生きることになります。人間は社会との関わりが無ければ自分の存在を意識することが出来ない動物です。そういった意味では、働くというのは社会参加として最も有用な経験になるでしょう。働く中で、自分らしい生き方を模索するヒントは必ずあります。人に認めてもらう為ではなく、自分の為に働くという経験に、価値を感じてほしいと思います。

 

事務局長 山田 完