近年、企業において精神障がい者が人材として注目されています。しかしながら、精神障がい者の方は一般就労で期待される働き方についていけず、離職率の高水準や勤続年数が低い現状があります。障がい者雇用を推進する行政や支援者が精神障がい者の状況に向き合わず、当事者ごとに様々な事情や状態があるのに画一的な支援と訓練で就職活動を進めています。当然ながらそのような就労支援では、企業と当事者の間で発生するミスマッチを防ぐことが出来ません。私たちは精神障がい者の就労について本当の支援が出来ているか、行政や支援者と当事者自身が振り返り、当事者が自分自身に必要な課題を自覚して具体的な行動を起こす必要があります。

 

厚生労働省の発表によると、精神障がい者の1年後離職率は50%に近く、また障害者職業総合センターのレポートでは勤続年数も身体障がいや知的障がいに比べて際立って低いという数字が出ています。精神障がい者の就労支援について取り組みの期間が浅い事、精神障がいについての医学的な研究が途上である事を考慮すると、現状の支援制度が適切なのかどうかを検討しなければならないのは明らかです。行政や支援者側が五里霧中で混乱しているのに、受け入れ先企業に合理的配慮を一方的に求める建設性と責任感の無さは強く反省されるべきです。

 

さしあたり、精神障がい者の特性を考慮しながら「得意分野を重視する就労」の場を模索するアプローチを始めなければなりません。例えば農福連携がその成功事例として脚光を浴びています。農業をベースに加工・販売を組み合わせる六次産業化により今後もさらなる展開が期待できるという点で、とても優れた成功事例であると言えます。農福連携は当事者の体調や状況に合わせた仕事の切り分けや当日の役割分担が容易であり、日本全国で障がい者中心の雇用を実現しています。

 

農福連携の考え方は、ホワイトカラーの業種にも取り入れることが出来るのではないでしょうか。ICT技術の発展で、性能の良い使いやすいパソコンが容易に手に入る時代です。また、ホワイトカラーと言っても常に臨機応変に対応しなければならない業務ばかりではありません。納期が比較的長い仕事であれば、担当していた人の状態が急変しても代替の人員で対応できる態勢を工夫することもできます。最終的に完遂すれば成功だと思いませんか。

 

失敗は成功の元と言っても、限度があります。健常者にとってさえ過酷で問題のある悪い働き方の文化に対して、精神障がい者は身を張って社会に対する警告を発しているのです。そして、精神障がい者の離職率が高い・勤続年数が短いという事実は明らかに一般就労の職場環境が障がい者にとって不向きだという現実を突きつけられています。

 

精神障がい者が離職しない『継続就労』という成功事例を普及し増やす方法は、雇用する当事者と向き合って特性を双方でしっかり把握することです。どんな成果や貢献を期待するかを文書などで明確にさせておくなどで「得意分野就労」が成立します。雇用者側の配慮のもと当事者が活躍できる環境づくりが重要です。また、「不得意分野」も把握や他者への引継ぎが出来るようにして、継続したマネジメントが行われる必要もあるでしょう。

 

ほぼ日本中で人手不足が問題になっている中で、本人の特性を考慮しない働き方を続けることは滑稽でありながら笑えません。行政府は企業や支援者に責任転嫁をするのではなく、制度を抜本的に見直して精神障がい者が社会でしっかり働ける制度を模索しかなくてはなりません。精神障がい者は「得意分野就労」では健常者に負けない成果を出す能力があるのです。真の合理的配慮とは、社会と障がい者の両方をベストマッチさせる事です。

 

精神障がい者の働き方改革のシナリオは、当事者自ら始めなければなりません。意志ある当事者が直接関わっていくことが、障がい者を含む社会の変革に結び付いていくべきだと思います。

 

事務局長 山田 完