もともと、自我が強い方ではなかった。
 
田舎は人口密度が低い。
自分の周囲は空白だ。
 
ところが
 
上京して
 
人ごみの中に放り込まれ、強烈なコントラストが生まれた。
他者、他者、他者、他者、他者、他者…その中に「自分」が埋没した。
「埋没」ではなく「突出」かも知れない。
 
広大な、真っ白な雪原の中心で吐血したかのように。
クッキリと浮かび上がった。
「自我」に生々しい恐怖を覚えた。
 
「自我」自体に対する恐怖ではなく、「死」によってそれが失われることへの実感だったのかも知れない。