半開きだった目が、なぜか完全に閉じられていた。
見慣れた寝顔だった。
気持ち良さそうだった。
あまりに無邪気な寝顔に見えて、涙がこぼれた。
 
あなたは、これから焼却される。
 
 
あなたは私を待っていた?
 
私があなたの遺体に近づこうとしないから、最後に私を見ようと、半開きの目で待っていたのですか?
 
私が初めて遺体を見たのは、火葬の日の早朝。

そのとき、あなたは目を半分開いていた。

臨終を確認して、看護師が遺体のまぶたを閉じさせたはず。
けれど、私がやっとの思いで遺体と対面したとき、目が半分開いていた。
それが、火葬の直前、完全に閉じられていた。


焼却炉に入れられる瞬間
 
母が、「父さん、さよなら」と号泣しながら言った。

私にとって、それが何より辛かった。

母の口調から、若き日の二人の出会い・青春・絆・思い出…私の知り得ない様々なものを連想した。

父の脳は、今、燃やされる。
もう父の記憶はどこにも存在しなくなる。
 
それが母にとってどれほどの苦痛だろうか。
 
若き日の二人が笑顔で寄り添う写真を、何度も見たことがある。
私が知り得ない歴史がそこにあった。


けれど無情にも、父の脳は消えた。
 …
 
「白」だけが、私の視覚神経に深く刻み込まれた。
これが人間の最期だ。