太平洋戦争当時の日本戦闘機はどうもあまり速度が出ていない。英米独などはスピットファイア、P51、P47、FW190、Bf109などいずれも600キロ台の後半を出しているが、日本では4式戦の624キロが最高で雷電が616キロ、三式戦2型が610キロ、二式単戦が605キロ、紫電改が594キロ、5式戦が580キロ、零戦は565キロといずれも低めではある。
これはパワーのあるエンジンが作れなかったせいもある。零戦は1千馬力級の栄、5式戦が1500馬力の金星、4式戦、紫電改がカタログ上2千馬力、実質的には1600馬力級の誉でしかも故障が多い。米国のエンジンは同じカタログ上2千馬力でも排気量が大きく性能に余裕がありトルクも大きいので余剰パワーが格段に違う。また過給機も排気タービン、機械式スーパーチャージャーともに日本とは性能が段違いなので高高度性能がこれまた格段に良い。
F4Uコルセア、P-47サンダーボルト、F6Fヘルキャットなどに搭載されたR-2800(通称:ダブルワスプエンジン)は、アメリカの空冷星型18気筒エンジンで排気量は45.9リッターもあり、同じ2千馬力とは言っても36リッターの誉とは格が違う。自動車で言えばV8 4.5リッターとV6 3.5リッターを並べて比較しているようなものだ。
しかしそれにしても速度が違い過ぎる。計測の方法の違いもあるんだろうけど時速で100キロも違うのは何か理由があるんだろうということで調べてみると翼の大きさが違う。要するに翼面荷重で日本の戦闘機は重量に比較すると翼の面積が大きい。零戦は翼の面積が21平米で翼面荷重が110キロから148キロ、紫電改が翼面積23.5平米で翼面荷重が160キロから170キロ、雷電はインターセプターで翼面荷重が大きいと言っても翼面積が20平米で175キロほど、4式戦が翼面積21平米で翼面荷重が185キロ、2式単戦も翼面積が15平米で翼面荷重が185キロ、試作機では海軍の震電、陸軍のキ87、キ94Ⅱなど200キロを超えるものがあるが、実用機では最高値で185キロほどではある。
米軍機ではF6Fが翼面積31平米で翼面荷重が185キロ、この機体は戦闘重量が6トンで紫電改や4式戦の1.5倍ほどもある。海軍の烈風は戦闘重量が4.7トンで翼面積はF6Fと同じだから相当にでかい翼がついている。同じ海軍のF4Uも同程度、陸軍のP47は重量が7トン級の巨大戦闘機だが、翼面積は29.9平米で240キロほど、第2次世界大戦最高の戦闘機と言われるP51が翼面積21.9平米で翼面荷重が180キロほど、そうすると烈風なども4.5トン級なので艦上機であることを考慮して翼面荷重175キロ、翼面積26平米くらいがいいのではないだろうか。
日本はとかくに戦闘機は格闘戦能力を重視して翼面荷重を小さくする傾向があったが、そうすると必然的に翼面積が大きくなり重量、抵抗ともに増すことになる。二式単戦などは着陸速度が速く、「殺人機」などと言われたが、それでも翼面荷重は185キロほどでそれほど高いというほどでもない。高速重戦闘機がいいか、格闘能力に優れた軽戦闘機がいいか、議論はあるだろうが、ある程度速度が出ないと逃げる敵機を追いかけることができず、相手が格闘戦に付き合ってくれないと主体的な戦闘ができなくなるが、わざわざ不利を承知の戦闘などするはずもない。
零戦なども雷電などを作るよりも32型を出したときに翼面積を15平米くらいにして金星エンジンに換装してみたらよかったんじゃないだろうか。英国のスピットファイアは後期型で翼面積が22・5平米、翼面荷重は180キロほど、ドイツのFW190は翼面積が18.3平米で翼面荷重が260キロにもなる。日本は名人芸が好きなので戦闘機も格闘戦の名人芸好みだったのかもしれないが、またエンジンのパワーがないので翼面荷重を上げてもそうそう速力が出なかったかもしれないが、戦争後期の陸軍機なら180キロから190キロ、空母への離発艦がある海軍機なら170キロから180キロほどが妥当なところだったんじゃないだろうか。
烈風の翼面荷重130キロ、翼面積30.89平米と言うのはどう考えても時代から外れ過ぎていたように思う。30.89平米と言う翼面積は機体重量が1.5倍ほどもあるF6F、P47や双発のP38と同程度ではある。P38など運用重量が8トンほどもある。戦争後期の日本の戦闘機には安定した大馬力エンジンがなかったが、三菱のハ43に翼面荷重180キロ前後の機体を開発すればそこそこの戦闘機ができただろうけど戦闘機設計に対するフィロソフィーが違うから無理だっただろうか。全備重量4.5トン、翼面荷重175キロ、翼面積26平米、最高速度650キロで相応の格闘性能、このくらいの機体ができればよかったんだろうけどそれができたとしても戦争の局面が変わるなんてことはなかっただろう、‥(^。^)y-.。o○。
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