「ねえ、あなたはどうなの。彼女のこと、どうしたらいいと思う。」
女土方が僕らの乱痴気騒ぎが収まったのも見極めて切り出してきた。
「会社の考え方もあるでしょうし、本人の意思もあるでしょうけど置いてあげたらいいと思うんだけど、・・。本人も続ける気があるというし、あの英語力は貴重だと思うし、それにね、・・。」
「それにどうしたの。」
「今、ここで放り出すのはちょっと情がないように思うんだけど、・・。メンタルの問題もあるしね。」
女土方がちょっと微笑んだ。
「あなたって本当にやさしい人なのね。でもそうなると『面倒見ろ』って言われるわよ。それでもいいの。」
そう言われるとちょっと考えてしまうが、まあ、そうそう手がかかりそうなわけでもないし、かわいいところもあるんだからそれはそれでいいんじゃないだろうかといかにもお気楽な男流の考え方で「まあ、そうなったら仕方がないかな。でもあなたはどうなの。」と女土方に聞くと「良いも悪いもないわ。あなたがそう言うんならそれはそれでそうするしかないでしょう。確かに仕事はできるようだし、・・。あとは会社の意思だけど、ね、・・。」と承知してくれた。
クレヨンは「あんな無機質な感情のない女なんて私は絶対に嫌だからね」とか騒いでいたが、女土方になだめられて大人しくなった。
翌日、出社すると女土方から社長のところに行くように言われた。僕が社長室に行くと社長と室長が一緒に待っていた。僕は女土方にも聞いてほしいので読んでくれるように社長に頼んだところ二つ返事で了解してくれた。そこで内線で女土方に電話してこっちに来るように伝えたついでに知的美人が来ているかと聞くともう来て仕事をしているとのことだった。
女土方が社長室に入ってきたのを合図に僕は話を始めた。知的美人がアダルトに出演していたのは事実であること、それは彼女の精神的な不安定さが主な原因であることなどを手短に話した。そして知的美人の語学力と事務処理能力も現場としては捨てがたいことも付け加えた。話が終わると北政所様は社長を見た。社長は僕を見て「どうするんだ」と言った。
『どうするんだって僕に振るなよ。それはあなたが決めることだろう。』
そう言ってやりたかったが、まあ、上司から意見を求められれば仕方がないので答えてやった。
「アダルトに出演していたのは事実です。本人もそう言っていたし、左の鼠径部に小さい蝶の刺青があるのも一致します。でもそれはここだけの話で要はよく似ているという程度ですから何とでも言い繕えると思います。人間的には若干癖がありますけど彼女の語学力や事務処理能力は現場としては捨てがたいものがあります。それに病気と言うのにここで放り出すのもちょっと情に欠けるかもしれません。」
そこまで言うと北政所様が「そう言うことになるとあなたが面倒を見るということで良いのかしら」と来た。なんで僕が面倒を見るんだよ。でも行きがかり上、僕しかいないんだろうなあ。
「ねえ、あなた、彼女のその入れ墨って見たの。」
北政所様がちょっと興味本位なことを聞いてきた。
「ええ、見ました。押さえつけてパンツを剥ぎ取って足を開いて確認しました。」
僕がそう言うと北政所様はちょっと苦笑いの体で「まさかそれは冗談でしょうけどあなたならやりかねないかもね。」と言った。それを聞いて社長が吹き出したが、僕が社長の方を向き直ると慌てて体裁を繕った。
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