バイクとクルマが位置情報などのデータをやり取りすることで、事故を未然に防ぐシステムをイスラエルの企業が開発している。ドイツのボッシュ社の分析によると、この技術はバイク事故を3分の1に減らす実力をもっているという。さらに小型化が進めば、応用範囲は「人」にも広がりそうだ。


バイクは危険──。子どものことを考える親なら、きっとそう言うだろう。実際、バイク乗りが事故で死亡する確率を走行距離当たりで比べると、自動車のそれより30倍近くも高い。


その原因として考えられるのは、「バイク乗りはバイクに乗っている」からだ。バイクには通常、ここ数十年でクルマの安全性を大幅に向上させてきたシートベルトやエアバッグ、クラッシャブルゾーンといったものが備えられていない。


この問題を解決する方法は、バイクを「クルマ化」するアイデアを除けばひとつしかない。テクノロジーの力で死傷を最小限に抑える最も論理的な方法は、バイクとクルマが近づかないようにするシステムを構築することだ。


イスラエルの企業Autotalksは、同社が大型車両向けに開発したV2V(車車間)通信技術で、それを実現できると考えている。


車両の動きや位置情報をやり取りするシステム

Autotalksはドイツの自動車部品大手であるボッシュの協力を受け、Wi-Fiを利用したこのB2V(バイク車間)のコミュニケーションシステムを開発・テストしてきた。このシステムは、視界の内外を問わずバイク付近の車両をトラッキングし、衝突の危険が迫っている場合は運転者に知らせ、事故を防ぐための十分な時間を確保する。

このために近距離通信技術を使い、位置や速度、進行方向、ブレーキモードなどの情報を、同種のハードウェアを装備する付近の車両とやり取りする。このハードウェアは軽量でコンパクト、低電力なので、二輪車にも十分組みあわせられる。実際、イタリアのドゥカティ製のバイクを使ったテストが予定されている。

Autotalksの共同創業者で最高技術責任者(CTO)のオン・ハランは、こう語る。「このハードウェアは低コストで小型軽量なソリューションです。広い温度範囲で動作するうえ、バイクのどこにでもとりつけられます」

急ブレーキをかけるクルマや赤信号を無視しそうなクルマなど、危険な存在を検出すると、このB2Vシステムは運転者に音声もしくは視覚で合図を送る。ただし、合図が送られるのは衝突が迫っていると思われる場合のみだ(このシステムでは大型車両に対しても、バイクの存在を知らせるように設定できる)。

ボッシュが実施した分析によると、このシステムによって、ドイツで起きるバイク事故の3分の1を防げる見込みが示された。また同社は2017年5月、AutotalksのB2Vシステムを組み込んだ開発研究を行うと発表している。


普及していなければ効果が薄い、という問題

期待をかき立てられるヴィジョンだが、ひとつ大きな問題がある。ほぼすべての車両に同種の技術が備わっていなければ機能しないという点だ。


調査会社IHS Automotiveでリサーチディレクターを務めるエギル・ジュリウッセンは、「V2V技術がそれらの機能を発揮するには、政府による義務化が必要です」と語る。この提案に欧州連合(EU)加盟国の多くは難色を示すと思われるが、米国でなら実現する見込みはある。というのも米国では、すべての新車にV2V通信システムの搭載を義務づける規則の導入を、米国家道路交通安全局(NHTSA)が検討しているからだ。


「V2V技術は非常に有用で、多くの命を救えます」と、ジュリウッセンは語る。「あらゆるタイプの事故を総合したコストは、米国GDPの2パーセントを占めます。死傷を取り巻く間接的なコストも計算に入れると、最大で5パーセントです。長期的なメリットは計り知れません」


Autotalksのこの技術は、さらに小型化されれば、スマホベースのWi-Fiシステムを介しても展開できるかもしれない。「この技術は自転車など、ほかの“交通弱者”にも適用することも可能です」とハランは語る。「たとえば僻地の道路を横断しようとしている高齢者など、歩行者の役にも立てるはずです」


四輪はエアバッグやシートベルト、ボディの構造など乗員に対する安全装備を改良、進歩させてきたが、バイクは基本ライダーを守る装備と言うのは何もないからなあ。こうしたお互いの位置を検知し合うシステムがあれば衝突などはかなり防げるだろう。先日、新東名でトラックに追突されて女性ライダーの方が亡くなったが、こうした事故も減少するだろう。


ただ、こうした機器はここにも書かれているようにすべての車やバイクが装備していないと意味がないのは当然ではある。ただ、今後は自動運転などの絡みでこの手の機器は四輪には装備されるかもしれない。でもバイクはどうなんだろうねえ。


ところでバイクの場合は車両それ自体へのライダーの防護装備は皆無と言っても良い状態だが、ヘルメットに加えて各種のプロテクターが開発されてライダーの安全と防護に貢献している。うちの古い指導員に言わせると昔は二輪教習では教習生はヘルメットくらいであとは生身だったので急制動だのコーナリングなどで転倒すると脱臼、骨折は当たり前で頻繁に救急車を要請していたらしいが、プロテクターを着けるようになってからそうした事故はほとんどなくなったという。


実際にコーナリングで転倒した教習生がいて結構派手にこけたので驚いて現場に行ったが、当の教習生はかすり傷一つなかった。この2年半でバイクの転倒は日常茶飯事だが、それでけがをしたのはクランクでこけて手首を骨折した高齢の方と一本橋から落ちそうになってアクセルを開けてために落ちた上に転倒してスクーターに引きずられて足首を脱臼した女性の2名だけで他にはいない。


そうしてみるとプロテクターと言うのはかなり偉大な防護器具なのかもしれない。バイクの卒業式には「胸部と脊椎、それに四肢のプロテクターは着けた方がいい。何をつけてもダメな時はダメだけどプロテクターを装着しているのと生身では天と地ほども違うから、・・。」と頭蓋骨や肋骨がどれほど脆いか例を挙げて話している。


でも時速100キロで転倒したら何を着けていようと絶対に助からないと言うとうちの二輪主任が「脊椎プロテクターを着けていれば背中で滑れば大丈夫です」と言うが、滑走が止まった時は尻がなくなっているだろう。うちで使っているプロテクターはかなり安物だが、それでも防護効果は大きい。プロテクターは間違いなくライダーの身の安全を守る効果があるので、交通監視衝突防止システムなどのあるなしにかかわらずライダーの皆さん、是非プロテクターを装着しよう。


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