そこまで言ってふと思うことがあった。そこで一旦ビデオを止めてちょっと巻き戻した。そしてその妖精さんをよく見てみた。

「ねえ、これって彼女、・・・。」

僕は女土方を振り返った。女土方は黙って頷いた。

「彼女がアダルトビデオに出ているんじゃないかって言って来た人がいるのよ。それでいくつか見たんだけど必ず顔を隠しているの。でも左の内腿に小さい蝶の刺青があるでしょう。」

「それを調べろって言うの。けっこう際どいわね。でもあんなものプリントかもしれないし分からないじゃない」

「黒子みたいなものがあるでしょう。小さいけど、・・。際どい所に、・・・。」

確かに鼠径部に小さい黒子がある。あとは体の特徴で分かるだろう。でも顔の輪郭などは極めて良く似ている。間違いないんじゃないだろうか。それにしてもどうしてアダルトなんだろう。彼女それなりにきれいなんだから男なんていくらでもいるだろうに。

「あなたが確かめろって言うのならやるけどけっこう際どいことになると思うけど、・・。いいの、それでも」

女土方はにっこり笑って頷いた。

「良いわ、思う存分やってきて。どうせ何を言ってもやる時はしっかりやって来るんだから。でもきちんと結論を出してきてね。」

「え、・・・。でも誰があんなものを持ってきたの。」

「内部告発みたいよ。教育関係の会社が問題があるんじゃないかって。別に良いと思うんだけど、・・・。でもちょっとねえ、アダルトは、・・。」

女土方は何となく乗り気がしないという風情だった。

「社長なの。」

「いえ、室長、個人的に何をしようとそれは構わないけどこの手のものに出演するのはまずいんじゃないかって、・・。」

「ふうん、まあ分かったわ。多分大丈夫と思う。彼女、やる気満々だったから。一声かければ乗ってくるかも、・・。でも昨日の今日ではいくら何でも勘ぐられるからしばらく待ってね。ちょっと様子を見てみるから。」

「そうね、彼女、頭も良いし、感も良さそうだから。でも今日はそんなに込み入ったことをしていたの。」

女土方はいきなり変なところを突いて来た。この辺のやり取りは女と言う生き物はなかなか鋭い。男はバカだから調子に乗ってべらべらしゃべってはど壺にはまってにっちもさっちも動けなくなる。

「コーヒーを入れてもらったわ。彼女ね、私のことをいろいろ調べていて『女じゃないオーラ』を出しまくっているって言っていたわ。私の体を見てみたいって。」

「女じゃないオーラを出しまくっているって全くその通りね。私、彼女は嫌いだけど言っていることは間違っていないわ。」

クレヨンがまた余計なことを言った。僕が女じゃないオーラを出しているならこいつは人間じゃないオーラを出しまくっているだろう。僕はクレヨンに飛びかかって押さえ込むと、「何だって。よく聞こえなかったからもう一度言ってごらん」と口の傍を引っ張りながら言ってやった。このサルはふがふがはがはが言うだけで何らなすところはなかった。


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