「それは分かったわ。で、今日の用事はそう言うことなのね。あなたの言うことは分かったけどちょっと私にも都合があるから考えさせて、ね。」
知的美人はちょっとシニカルな笑みを浮かべた。
「私ね、やりたいことはその時にやっておくことにしているの。何時までも若いわけじゃないし、慎重になって持ち越したからって必ずしもうまくいくわけでもない。そうでしょう。だからあなたのことは諦めない。あなたの正体が何なのか確かめてやるわ。だっていいでしょう、同性同士だしあなたはビアンなんだから、・・。何の問題もないじゃない、ちょっとくらいからんでみても。」
「あのね、そう言う問題じゃないでしょう。人の心の問題なんだから。男同士だろうが女同士だろうが、一番大事なのは心でしょう。」
知的美人はふふんとせせら笑った。
「そんなずい分少女チックなことを言うのね。今時少女でもそんなことは言わないわ。良いじゃない、欲望でも好奇心でも何でも。心が満たされればそれで。そうじゃない。」
『お前な、刹那的な快楽だの欲望だの好奇心だの、そんな類のものなら僕は富士山が出来るほど持ち合わせている。今だってお前に飛びかかって身ぐるみ剥いでやろうという欲望にかろうじて耐えているんだ。でもな、そうそう欲望に正直になっていたらこの世の中どうなってしまうんだ。お前も少しは耐えると言うことを知れ。』
僕は心の中でこのくらい知的美人をへこませておいて立ち上がった。
「じゃあ要件は分かったわ。今日はこれで帰るわ。」
知的美人は何も言わずに玄関まで後をついて来た。
「じゃあ、今日はありがとう。楽しかったわ。」
そう言って知的美人に背中を向けた時いきなり抱きすくめられて胸を鷲掴みにされた。そう言えば以前女土方ともめた時にビアンバーのママに胸をつかまれたことがあったっけ。僕は男だから胸には特に思いはない。今までも暑い時など胸をはだけ過ぎたりして注意されたことが何度もある。
男としても胸フェチよりはけつフェチだったので胸には自分のも他人のものもこれと言った思いはない。でもさっきからかろうじて耐えているところにそんなことをされてスイッチが入ったような気がした。僕は知的美人の手を持って体から外すとゆっくりと振り返った。
「あのね、あなたのようなきれいな人にちょっかいを出されて私だって堪えているんだから止めてくれる、変なことするのは。」
「我慢なんかすることないじゃない、その気があるんならやればいいわ。」
知的美人は、『戻れ』と目で合図をしたが、僕はそれに笑顔で答えて部屋を出た。ああ、本当に危なかった。危機一髪とはこのことだ。
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