「どうもお待たせ」
僕は知的美人に声をかけた。知的美人は何も言わずに会社の外に出た。どこに行くんだ、この女は。僕は心の中ではそう思いながら何も言わずに後を追った。知的美人はしばらくは何も言わずに歩き続けたが、突然僕の方を振り返ると、「どこに行っても同じだけどうちに来る。自宅の方が落ち着くから」と言った。


僕はこの女の自宅がどんな所なのか見て見るのも面白いと思い黙って後に続いた。しばらく歩いて知的美人は地下鉄の駅へと降りて行った。そこから地下鉄に乗っていくつか行ったところで知的美人は地下鉄を降りた。ちょっとばかり都心を外れたと言ってもそこは東京23区内だった。


駅を出て十分ばかり歩いたところにあるマンションの一室が知的美人の住まいだった。そこは1LDKの間取りで部屋の中は必要最小限の家具しか置かれていないあっけらかんとした部屋だった。



「何もないでしょう。でもごてごてした部屋は嫌いなの」



知的美人は着替えをしながらそんなことを言った。確かに何もないがらんとした部屋だったが、それでも必要なものは揃っていたし、家具類はシンプルだが、なかなか趣味のいい高価そうなものだった。



「何か飲む。ビールとかワインとか」



知的美人は僕を振り向いた。



「お酒は好きじゃないから遠慮しておくわ。」



「ああ、あなたはアイスコーヒーが好きだったわね。ちょっと待ってね」



知的美人は冷蔵庫を開けるとアイスコーヒーをグラスに注いで持ってきた。



「さあ、どうぞ。私はビールをいただくわ。」



知的美人は僕の前にアイスコーヒーのグラスを差し出すと自分は缶ビールのプルトップを切ってうまそうに飲み始めた。



「ビールってグラスに注いで琥珀色の液体と白い泡のコントラストを愛でながら味わうっていうけど私は缶のまま飲むのが好きなの。ちょっと行儀悪いけどね。好きなように飲むのが一番でしょう。」



「私に用事って何なの。」



僕はアイスコーヒーの入ったグラスを手に知的美人に聞いてみた。



「そんなに慌てなくても良いでしょう。ゆっくりしようよ。でもあなたはそうも行かないか。いやね、あなたのことを見ていると全く女の匂いがしなくて、・・。そのことにちょっと興味があってね。どうしてこの女って女の匂いがしないのかなってさ。ねえ、どうしてなの。」



『そりゃあ、お前、僕は男だからな。女の匂いなんてするはずもないだろう』



そんなことは言えないので、「さあねえ、色気がないんでしょう。よくそう言われるわ。」と適当にごまかそうと思った。



「色気とかそう言うのじゃないのよ。色気だったらあなたは十分だと思うわ。きれいな人よ。あなたと仲良しの伊東さんもきれいだけどあなたもきれい。そうじゃなくてね、私、あなたが女じゃないんじゃないかって思うの。そう言うオーラを出しているのよ。全身から、・・・。」


※ ずい分長い間、ご無沙汰でした「「小説を楽しもう」というタイトルに相応しくまた少しずつ小説をアップしていきたいと思います。僕が一番好きな佐山芳恵とその仲間たちの話ですが、この仲間たち、登場すると作者の意図したこととは異なり、全く勝手なことを始めてしまうので今回はどうなることやら、・・・。どうかそんな彼女(?)たちの活躍を暖かく見守ってやってください。


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