こんにちは。
今日は最近読んだ面白い本を
紹介したいと思います
昭和の戦時中あたりに書かれた
中島敦の「悟浄出世」という物語。
今日昭和の日なのでね
(後付け)
この話は西遊記を
題材にされているそうで
主人公はあの河童の沙悟浄。
三蔵法師等と出会う以前の話です。
その沙悟浄は
疑い深く何でも考えすぎる性格であり、
なんでも理解しないと気が済まない妖怪。
そして独り言をブツブツ言っていて
周りからは病気と言われる始末。
その病気を克服する為に
様々な仙人に会い教えを乞う旅に出ます。
一部抜粋
「やれ、いたわしや。因果な病にかかったものじゃ。この病にかかったが最後、百人のうち九十九人までは惨めな一生を送らねばなりませぬぞ。元来、我々の中にはなかった病気じゃが、我々が人間を咋うようになってから、我々の間にもごくまれに、これに侵される者が出てきたのじゃ。この病に侵された者はな、すべての物事を素直に受取ることができぬ。何を見ても、何に出会うても『なぜ?』とすぐに考える。究極の・正真正銘の・神様だけがご存じの『なぜ?』を考えようとするのじゃ。そんなことを思うては生き物は生きていけぬものじゃ。そんなことは考えぬというのが、この世の生き物の間の約束ではないか。ことに始末に困るのは、この病人が『自分』というものに疑いをもつことじゃ。なぜ俺は俺を俺と思うのか? 他の者を俺と思うてもさしつかえなかろうに。俺とはいったいなんだ? こう考えはじめるのが、この病のいちばん悪い徴候じゃ。どうじゃ。当たりましたろうがの。お気の毒じゃが、この病には、薬もなければ、医者もない。自分で治すよりほかはないのじゃ。よほどの機縁に恵まれぬかぎり、まず、あんたの顔色のはれる時はありますまいて。」
中島敦「悟浄出世」より
こんな感じで本作品で沙悟浄は
可哀想なくらい辛口なコメントを
貰い続けます
私自身も同じような性格の持ち主です。
沙悟浄を馬鹿にはできません。
逆に同感、同情してしまいます
読み始めはこんな哲学的・心理学的とは
思っていなかった為、裏切り感も良かったです。
自分の性格を
リアルな表現でズバズバ言われると
不快感があり受け入れ難いものですが、
妖怪という非現実感と昔話の雰囲気によって
この厄介な性格の馬鹿らしさを
素直に受け入れる事ができちゃいます。
この本を読んで
少し楽観的になれた気がします
文学の面白さを改めて体感しました。
青空文庫でも無料で読めますのでよかったら
読んでみてはいかがでしょうか
ちなみに、
細田守監督の「バケモノの子」も
この作品を参考に作られたとも言われてます