「LIVE LIMIT」@Club KNOT LIVE REPORT | MINORITY REPORT special issue electronic edition

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 2013.11.10(Sun.)

DUSTY-I MARCH 「LIVE LIMIT @Club KNOT




 その決して上っ面だけでは語らない、ありのままの喜怒哀楽を飾ることなくさらけ出した剥き出しの言葉が、MARCHがおりなす音に乗って入り込んできて心が裸になっていく。そして、底に沈んでいた言葉になっていなかった思いがじわじわとこみ上げてくる。


LIVE LIMIT”

 

 そのタイトルが示すように、この約2時間半に渡ったライブを振り返ると、“音楽家・DUSTY-I”としての枠を超えた、ひとりの人間としての生き様を目の当たりにしたような気持ちになった。

 それは、DUSTY-Iがマイクを握った日からの道筋を紐解いていくようなライブ構成も勿論だが、それを形成する一曲一曲が繊細な喜怒哀楽から生まれてきたことも意味している。だからこそ、そのおびただしい熱気と共に発散される一語一句に寄り添うことができるのだし、躍動するその生命力満ち溢れた一挙手一投足にのめり込んでいくのだ。そして、そのDUSTY-Iの言葉と情熱がオーディエンスの中の何かと反応してさらなる熱を生み、ステージとフロアの一体感を生んでいく。













 また今回、日頃から東三河の音楽シーンで切磋琢磨しているアーティスト達を客演に迎えたのも大いなる見所であり、このシーンが持つ底力も目の当たりにすることができた。


 “神風特攻舞隊”と“M”と共にHIP HOP独自の力強さを存分に魅せれば、一転して“内藤健太”が奏でるアコースティックギターの芯の通った柔らかな音色の上でお互いの色を出し合う。そして、“H LUQ”の洗練されたスタイルと“CHALLI”の貫禄のパフォーマンスに触発されて、さらなる相乗効果を生んでいく……






 


 









 ステージ上でその気持ちと気持ちが交わり合って生じた化学反応が、DUSTY-Iに潜んでいる新たなる一面を引き出していく。そのそれぞれから引き出された一面が、どれも違う表情を持っていたのがとても印象に残った。

 
 ライブも終盤に差し掛かり、DUSTY-Iがこの「LIVE LIMIT」の最後の曲に選んだのは、初披露となった「明日に見る空、今日吹く風」だった。

 この胸に引っかかっていたわだかまりが、流されていくようにさえ感じる爽快なイメージ。小気味よく徐々に盛り上がっていく壮大なビートに乗せられた、葛藤の中で希望を見いだそうともがく言葉に背中を押されるような感覚を覚える。内面の深いところと向き合っているからこそ、その真っ直ぐ外に向けて希望を持たせた言葉がより響くのだろう。

 「明日に見る空、今日吹く風」が、まさに最後を飾るにふさわしい一曲であったことは、この壮絶な「LIVE LIMIT」を乗り切ったDUSTY-IとMARCHに最後に送られた拍手と観声が物語っていた。




 

 生きる意味を形づけたもの 

 それは形のない情熱だろ  


「LIVE LIMIT 」/ DUSTY-I


 

 まだ熱気の余韻が残るフロアで、脳裏に焼き付いている断片的な場面を回想することを繰り返す。

 鮮明に見えつつある内側を駆けめぐる熱を帯びた何かを、その場面に重ねながら追いかけ続けていた。 




文:篠原 拓郎  写真:荒川 晃充