NON×SOCIETY REMIX VOL.1 PRESENTS 『時の音』 report | MINORITY REPORT special issue electronic edition

MINORITY REPORT special issue electronic edition

Interview , Event report …… etc

NON×SOCIETY REMIX VOL.1 PRESENTS 写真展&上映会『時の音』

 2012/7/21~2012/8/5 @hair&make Lab.    EVENT REPORT








  



Lab.店内にあるギャラリー“WIND CHIMES”入り口の白色の引き戸を開けて、足下に敷かれた竹を踏みしめながら中に入ると、デニム香の石鹸の匂いに包まれる。古きからの日本を彷彿とさせるような竹や和紙や風鈴といったどこか暖かみのある空間と、白色の壁に装飾されたガラスの破片や歴史的な出来事が一面を飾る昔の新聞といったどこか無機質な空間が対照的に映るなど、同じ空間の中で異なる世界同士が混じり合う。そこには、明らかに日常では味わえない創造的な空間が広がっていて、ここでしか流れない時間を古時計が刻んでいた。













 

 手作りの照明に照らし出される、その視点と感覚で切り取られた“一瞬の世界”。

 それは、オーストラリアをはじめとする海外9カ国をその足で歩きその目で捉えた写真家の要田直也(Non×Society Photograph)の“人物の表情や風景の色彩が豊かな世界”であり、同じく写真家の荒川晃充(Non×Society Photograph)の“現代の日本に生きる者としての誇りであり問題提起を込めたメッセージ溢れる世界”である。勿論、広島や長崎、東北といった日本各地で撮影してきた写真、ギャラリーの外にあるLab.店内に飾られた写真や店内の窓ガラスに飾られた写真も例外ではない。

























 

 

 ひとつ言えることは、紛れもなくその時のその瞬間をシャッターに収めることができたのは彼らだけだということだ。

 その唯一無二の世界に触れることによって視野は広がり、それをキッカケにまた何かを感じて考えさせられる。それは、その世界に触れた者の中に何かを残すからだ。それほどにも、ひとつひとつの写真の世界観は濃密なものであり、それぞれが強く訴えかけてくる。それは、その過去になったはずの彼らが切り取った“一瞬の世界”に彼らの魂が宿って、あの空間で生き続けていたからだろう。その彼らの世界観は、それぞれが期間中に制作した写真集「EYE」(要田直也)と「Main Line」(荒川晃充)、それから合同で制作した「from Japan voice」にも一貫して表現されている。













 

 そして、もうひとつ忘れてはならないのが映像作家である梅田晃希(Non×Society Film)が行った上映会「East Wind #1 平成24年3/10~13 東北篇」だ。

 これは、東日本大震災発生から一年となる今年の3月に、梅田と要田と荒川の三人で東北の地を訪れた4日間の軌跡が描かれた映像作品となっており、今、日本に生きている者として忘れてはいけないことや問われていることを改めて考えさせられる内容となっていた。また、日本の美しき広大な自然や被災地の現状がまざまざと表現されており、それに彼ら三人のメッセージが重なって、上映中に自然と胸の奥が熱くなって奮い立たされる場面が何度もあった。要田と荒川の世界観にじっくり触れ、最後に梅田の上映会を見終えてギャラリーから出てきた人達の心から満たされたであろう穏やかな笑顔が開催期間中でとても印象的だった。


 彼ら三人の今までの活動の全てを出し切った今回の「時の音」。

 写真家と映像作家であり、旅人でもある彼らは、次はどのような空間と作品で、どのような世界を魅せてくれるのだろう?

 そんな更なる期待を三人が感じさせてくれた「時の音」であった。

















text & photo by  TAKURO SHINOHARA