昔 昔 ママっちの実家に 「ゆうちゃん」 という女の子の柴犬がいた

ゆうちゃんは 生後2、3カ月くらいのときに お寺からもらってきた

まだ小さくて コロコロしてて かわいかった

田舎だったから トビが空から ゆうちゃんのこと 狙ってたように思えて

お散歩の途中で こわくて ゆうちゃんを 抱えて 走った記憶がある

大学から家を出た ママっちのことを ゆうちゃんは 忘れずに

家に帰ると 全身で喜びを表してくれた 

ママっちは 子供のころから 自分の感情を押し殺して生きてきた

いつもいい子を演じてた

だから 反抗期もなかったし 代わりに 親と親しい会話をすることや 相談をすることもなかった

そんな若かりし頃のママっちは 今思うと この ゆうちゃんに とても救われていた

哀しいことがあった時や 嫌なことがあった時は ゆうちゃんの肩を抱き

ゆうちゃんに いろんなことを語った

ゆうちゃんは もちろん何も言わないけれど 嫌がるそぶりも見せずに ただそっと ママっちの傍らに座り 話を聞いてくれた

心理学やコーチングでいうところの 「傾聴」 だ

ただ ゆうちゃんに話を聞いてもらうだけで 自分の中で 心の整理ができて なんとかやってこれたのだと 今になって つくづく そう思う

ゆうちゃんは ママっちの カウンセラーだった

もうずいぶん前に お星さまになってしまった ゆうちゃん

写真もないけれど、その笑顔は 今も ママっちの 心の中に鮮明に残っている

ゆうちゃん ありがとう