ムンク | 北東西南

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shimaのアイドル・芸能ブログです。

2008年03月22日

http://www.tokyo-np.co.jp/event/bi/munch/2007100602.html


「叫び」が有名ですな。
っていうか、「叫び」しか知らんかった。

今回の展示は「フリーズ」をポイントにして展示されています。
フリーズというのは、「装飾」のことで、建物の内装に、複数の絵をぐるりと帯のように配し、鑑賞すること。
ムンクは自身のことを、装飾芸術の創始者と言っていたそうです。
私も、昨日まで装飾芸術や「フリーズ」って言う言葉は知らんかった。
この「フリーズ」の面白いところは、一枚一枚の絵の持っている主題と考えられる概念的なものや印象が、フリーズとして並べて鑑賞したときに全く違う印象に変化すること。
いや、変化というか。。意味が薄まるというか。。
いや、主題はそのままなんだけど、他者と調和することによって別の情態・情念が生まれる、という感じかな。
ほら、松潤と嵐の関係に似ている気がする(笑)

人間は自分のことしか(真実には)感じられないものでしょう?
だから、自分のことはとても重くて大変な意味を持っていると思うものだけど、視点を自分から引き離して、世界(環境)を主体にして見てみたらけっこうたいしたことなかったりして、でも、そういう風に自分を重たく感じる人たちでこの世界(環境)は作られているものであって、
そういうことが、このフリーズでは絶妙に現わされているのですよ。

フリーズはいくつかあって、その中に、「リンデ・フリーズ」というフリーズがあるんだけど、私はそれが一番スキだったなあ。


この「リンデ・フリーズ」は個人住宅に飾るためのもので、
眼科医のリンデさんがムンクに子供の部屋に飾るフリーズを依頼したのね。
子供部屋に飾るものだから、それにふさわしいような、風景画とか、明るい色彩で描いてほしいと依頼したのだけど、ムンクはそのフリーズの中の一枚に、公園で睦みあう男女の絵(しかも複数!)を書いてしまうのですよ。
結局この男女を絵から排除しなかったことで、リンデさんから受け取りを拒否されてしまうということになるのだけど、その後ムンクはその絵にある女の子の絵を書き加えるの。
それは、絵の最前方で、こちら側を正対視している無表情な女の子の絵。(ちなみにこの構図はムンクの絵に非常に多い。ものすごきまずい、決まりの悪い気持ちになる。さすが。)
これは少女(幼女)の生と性への興味を意味するんだと思うんだけど
ムンクからしたら、この女の子をいれなかったことで、充分に子供向けへの配慮はしておりましたで、ってことだったんだろうなあ。
このリンデ・フリーズは全体的に明るい色調だし、春夏のまぶしい感じ、生命力を感じるフリーズになっているんだけど、その中には物思いに沈む若者たちの絵があったりして、極端でない、バランス感覚がすげえなあ、人生ってこういうことだよなあ。と思わされたのでありました。

ムンクは同じモチーフを繰り返し描く人だったようで、同じ絵、構図が
繰り返し出てくる。時期によってタッチが違ったり、モチーフは同じだけれど、モチーフの持つ意味が変化している様を想像できたりして、非常に面白かった。分析魔の私としては妄想のしがいがこの上なくあった。
たぶんこの人は、自分をずっと描いていたんだと思う。
驚嘆するのは、それが、不安とか、翻弄される自分とか、情欲とか、居心地の悪くて目を背けたい部分であること。
私なら蓋をして無視し続けるだろう部分。
でもこの人は怖くて怖くて、とても無視できなかったんだろうな。
ものすごく繊細で、怖がりだったんだろうな、という印象を受けました。
女の人も怖かったんだろうな。。
この人の描く女の人はみんなモンスターみたいだもんな。

やっぱり男の人のほうが人生謎に満ちて面白いのかもな。。
私も、勇者は男で女はラスボスっていうイメージだもの。


帰ってから「ムンク」でネットサーフィンしてたら、いいムンク評があったので載せときます。

「この絵には,現代人がいだく不安が端的に象徴されているといわれている。では,現代人の不安とは,どのようなものだろうか。それは何か具体的なヒト・モノに対する恐怖,たとえば敵とか戦争とかに対するおそれとは異なり,自分の存在の根底にかかわる不安である。具体的な対象に対する恐怖なら,それをやりすごせば消えるだろうが,とらえどころのない不安は不気味に現代人をむしばんでいるともいえる」


「もうこれからは,室内画や,本を読んでいる人物,また編み物をしている女などを描いてはならない。息づき,感じ,苦しみ,愛する,生き生きとした人間を描くのだ」と日記の中で宣言している。ムンク生涯のテーマ「生と死と愛」が明確に打ち出された瞬間である。

 ムンクにとって「生と死と愛」は,不安と苦痛の源であった。それはたとえば,「愛(または女性)」をテーマとしたムンクの絵が,常に,「喜び」よりも「痛み」を伴っていることからも理解できる。「生と死と愛」は渾然一体となって,とらえどころのない救いがたい不安をムンクの中に呼び起こしていたと考えられる。そしてその不安は,現代人に蔓延しつつある普遍的な不安に通じるものでもあった。だからこそ,その不安をキャンバスの上にえぐり出して見せた一枚の絵に,私たちは共感するのだろう。