私が55歳からお世話になった関連会社は

 

ビルを管理する会社だった。

 

大型ビルの空調や電気設備の管理から、守衛受付、掃除などいろいろな仕事があった。

 

でも前職と勝手が違い、全くの素人だった。

 

行って間もなく守衛長さんが警備員の法定教育があるので

 

講義してくれるよう言ってきた。

 

私は部長だったので形の上では警備職のベテラン課長の上司に当たるというわけだ。

 

然し、これは今で言う無茶振りだった。

 

何も知らない警備業の法定教育の講義など皆目見当がつかなかった。

 

でも断るのもメンツもあり今後のこともあると引き受けた。

 

警備員のためになる何を話すか?

 

思いついたのが、なんと野球の外野手であった。

 

球場の観衆の目のほとんどは内野に注がれている。

 

外野は球が飛ばない限り蚊帳の外である。

 

然し打者が変わるたびにその特性に応じた守備位置、

 

飛球が来た場合はアウトカウントによって変わる捕球後の動き

 

などなどを反芻しながら。

 

投手の一球ごとに最良の守備の準備をしている。

 

観衆にはほとんど見られない地道な作業があること。

 

を話した。

 

これは有事以外、ほとんど仕事のない警備の仕事に対する

 

日常の心構えを説いたつもりだった。

 

 

文春今月号は芥川賞が掲載されているので買ったが

 

偶然「外野手の肩」と言う一文を見て上記を思い出した。

 

かれこれ28年前のこと【昨日のことは忘れているが昔のことは覚えている不思議】