70代、男性、アルコール性認知症、躁状態。


入退院を繰り返して、今もなお保護室隔離( 夜間のみ )、


隔離解除中は、


車椅子ベルト固定、…シートベルト的な生易しいものではなく、不要だと思っている患者様にとっては大変不快なもの。


つなぎ服着用にて、経過観察中。…脱衣やらオムツ外しがある為。上下のファスナーにロックがかかる為、自分では脱ぐことが出来ない拘束具。


いわゆる、処遇困難の一人。


…。


私は日勤だった。


病棟に着くと、


その患者様は、


朝から大声、深夜勤者は手に負えず、車椅子ベルトを自分で外したり、立ち上がろうとし、車椅子にも乗れず、患者様は地べたを這っている。


…なんという…。


夜勤からは、 『 夜勤は本当に大変でした、当直は危険行動がないなら経過観察でとのことです。 』などを申し送りされる。…申し送る時間があるなら患者様見てやれよ…。


日勤に変わり、状態は変わらない。…看護師長?何も出来ないし何もしない。精神科医?患者様を入れておくだけで、見にも来ない無医村病棟。隔離中の患者様は一日一回以上の診察が責務なはずだぞ。


私はコーディネーター業務で、その患者様の対応をスーパーウルトラ未熟な四年目看護師 ( 男性 )に丸投げする。


四年目看護師は、慌てふためきながら、なだめながら、それでも何とかやり過ごし、午前中が終了。


私の休憩時間になり、私は非情にも病棟を離れて休憩に入る。…病棟に居ると対応を任されるから。


休憩時間が終わり、病棟に帰ってくると、昼食を終えた患者様は、やはり地べたを這って大声を出していた。…ま、でしょうね。


同じ日勤のベテラン看護師が戻ってきた私に言う。


『 あの人もう、全ッ然ッ駄目!もう、不穏時の薬( リスペリドン )が効かないから、量を増やしてもらおう。 』…いや、駄目なのはオノレの力量だろ、オノレが何とかしろよ。


四年目看護師は疲弊、ま、頑張った方か…この辺りが限界か。


…。


私『 いえ、この人に薬は効きません、量を増やした所で何も変わりません。 』


ベテラン看護師『 それじゃあこのまま様子見るってこと? 』


私『 関わり方なのです。 』


ベテラン看護師『 …それなら、見本見せてよ。 』


私『 あ、はい。やってみます。 』…ぐふふ、待ってましたよ、その言葉を。


荷物をロッカーに片付け、地べたを這う、躁状態真っ只中の患者様に向かう。四年目看護師、ベテラン看護師はその様子を遠巻きに見ている。


私『 何事ですか。今日は、賑やかですね。 』


患者様『 あーん? 』


私『 辛そうです。 』


患者様『 辛くないわ! 』


私『 失礼、とても辛そうです。 』…相手が否定した言葉をさらに強調して、不快にさせて感情を吐き出させる。


患者『 うるさいわ、アホが! 』


私『 嫌な言葉を。 』


患者様『 アホがと言うとるんじゃ!消えろ!! 』


私『 では、そのアホの介助を受けないと、生活出来ない貴方は何者ですか。 』


患者様『 な…! 』


私『 やめましょう、そういうの。くだらない。何の意味もありません。 』…不快な感情を煽り、更に感情を吐き出させる。


患者様『 黙れ!!  』


私『 貴方は私を罵倒する。でも、私はその間も、なんとかして貴方をこの病棟から出そうと考えている。 』 …これは本当。


患者様『 何が言いたい! 』


私『 休みます、私が言うことはいつも変わりません。今は休息が必要なのです。 』…患者様に対して、毎日繰り返している言葉。


患者様『 休息休息って、いつまで寝てれば良いんだ。何も変わらん!!いつまで寝てればいいんだよ!看護師先生さんよぉ!  』…反応しない。皮肉?罵倒?ちなみに変わらないのは医師が出す気がないから。


私『 私が良いと言うまでです。 』※言い切ることが大事※日頃の関係性が大切。


患者様『 何を!医者の判断か! 』


私『 私の判断です。 』


患者様『 医者を呼んでこい! 』


私『 医者の次は誰を呼んできたら良いのですか。今のこの状況で、医師を呼ぶことが効果的ではなく、私が医師を呼ぶこともしません。 』…意図的な指導的に介入。さらに過剰な情報で、思考をパンクさせる。ちなみにこの状況で医師を呼ぶことは逆効果。


患者様『 くそ!! お前たちは嘘ばっかりだ! 』…お前などの言葉は暴言として扱い、必ず修正するが、今回は許容。


私『 今まではそうだったがも知れません、でも私は違います。 』


患者様『 勝手にしろ!!  』…看護師に自身の処遇を任せたという意思表示。諦め+疲労+関係性。


私『 ありがとうございます。 』


患者様『 やかましい!! 』


私『 夜も寝ず、朝から大声だして疲れたでしょう。お部屋に戻ります。鍵はかかりませんので。 』


患者様『 連れていけ! 』


私『 もちろんです。 』


患者様を車椅子に移乗、部屋まで案内、ベッドに寝て頂き、退室。※この流れは、日頃の介入の積み重ねで成立する私独自の介入方法です。やり方を間違うと関係性が崩れるので、真似はしないで下さい。


私『 こんな、感じです。ま、今回のは上手く行き過ぎました。少し、眠れると良いのですが。 』


四年目&ベテラン『 …。 』


患者様は、程なくして入眠。


私『 少し休んでもらいましょう。昼夜逆転もキツいので3時ぐらいに起きて、夜に備えましょう。後はお願いしますね。 』


四年目『 はい、ありがとうございます。 』


ベテラン看護師は、看護助手と無駄話をしている。


…。


うーん、


私の理想には程遠いなぁ。