シニカレ23話。 | 君の笑顔今も消えないから、

君の笑顔今も消えないから、

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君の笑顔今も消えないから、-2



ルリ子が提案した通り、いつものバーに知り合いを集めて自分の余命が幾ばくも無いことを告白した雅喜。その姿に不安な表情は無く、むしろ凛としている。

この回は雅喜とルリ子二人の回想シーンと雅喜がこの場所でピアノを奏でるシーンが交差します。


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君の笑顔今も消えないから、-4

君の笑顔今も消えないから、-5

君の笑顔今も消えないから、-6



雅喜:うちは音楽一家でね、兄貴と弟がいて・・俺は真ん中の男兄弟なんだけど




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雅喜:メーカーとしても、教室経営としても、身内から著名な音楽家を出すというのは如月の悲願のようなところがあったんだ




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雅喜:ただ・・こればかりは才能がものを言う世界なんだ。兄貴は勉強ができたからね。早々と経営の道を進んだ。弟は俺よりも素質あったと思う。だけど両親に反発して、高校卒業すると海外に逃げちまった・・
ルリ子:あなたは優しいから、期待に応えてあげたいと思ったのね
雅喜:中途半端なのさ。ピアノの腕前もね




君の笑顔今も消えないから、-9



雅喜:ところがある日の発表会で、俺は不意に激しい頭痛に襲われた。なんだかヤケになって、どうせダメだと苛立ちまぎれに弾いたモーツァルトが・・変に評価されて・・




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雅喜:平腕だった俺の音に、感情が湧き出たなんて・・褒められちまって・・
ルリ子:トランスしたのね




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雅喜:そう。まさにそう。頭痛くて朦朧としちまって、俺はトランスしたんだ。それからさ・・



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雅喜:頭痛が始まると、俺はむしろ喜んでピアノの前に座った




君の笑顔今も消えないから、-1


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雅喜:ある時・・不意に指が麻痺して動かなくなった・・もう限界だったんだ・・・




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雅喜:激しい頭痛で気を失った。検査結果は・・わかりやすく言えば手遅れって事だった




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雅喜:医者ももっと早く、子供の頃から耐えられないほどの痛みがあったはずだと言った・・・・あぁ、そうさ。その通りさ。だからなんだ。・・・・俺はその痛みと引き換えに、注目を浴びることができた。ドラッグのように・・元々は無い才能を、この頭の中の腫瘍は俺にくれた




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雅喜:こいつとは友達みたいなものさ。唯一、一緒に生きてきた。別にいいさ、長生きなんかできなくたっていいさ・・・・なのに、こいつは俺を裏切りやがった




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雅喜:これからって時に・・・っ・・・俺の指を動かなくしやがった




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雅喜:如月では用無しになった・・むしろ期待させて失望させた。周囲の複雑な・・それでも哀れむような視線にも耐えられなかった




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雅喜:何より自分が・・偽物であることがバレたようで・・




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雅喜:酷く・・惨めで・・・




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静かに奏でていた音色が止まり、雅喜の手が小刻みに震え出す。




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心配そうに見つめるみんな。




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震え続ける自分の手を見つめる雅喜の肩に、そっと手を添えるルリ子。




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雅喜:ところが一人になると急に怖くなった




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雅喜:いつ死んだっていい。そう去勢を張っていられたのは・・アーティスト気取りだった俺だったから・・




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雅喜:ピアノの弾けないただのニートが、不安と恐怖の毎日だった・・




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雅喜:考えるのはもうすぐ死ぬということばかり・・・誰にも知られず・・誰の心にも残らず・・・・怖い・・悲しい・・・・時々くる頭痛や発作は、トランス出来るという喜びから、ただの暗闇に引き込もうとする金切り声さ・・・誰も助けちゃくれない・・




君の笑顔今も消えないから、-33



ルリ子:別れさせ屋は?
雅喜:ネットカフェでたまたま流れた。死とか別れとか、たぶんそんな検索からの流れだろう。人の気持ちを縫ったり裂いたりする意図的な仕事だろうと理解した。・・・そうさ、簡単なのさ、何もかも。夢も希望も愛情も・・全て偽物なんだから




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雅喜:本物など何一つ無い。理解し合える人間などいない




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雅喜:そう思ってる人間がいるとしたら・・それは勘違いしてるだけさ




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ルリ子:愛し合うことも・・幻ね?
雅喜:存在して欲しいと思うことと・・存在しているということはまるで違う
ルリ子:・・奇跡も信じなかった?存在して欲しいとは思うけど
雅喜:・・あぁ・・




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雅喜:気持ちを戦略的に引き寄せて・・そしてある日忽然と姿を消す
ルリ子:・・別れさせ屋の不敗神話ね
雅喜:誰かを好きになり・・腫瘍があるかのように盛り上がって、その恋にトランスする・・




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雅喜:別れれば傷ついて・・泣いて・・・だけどまた誰かを好きになる。・・・・バカらしい、くだらないね




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雅喜:何もかも・・誰もかれも・・生きてること自体がくだらない・・・・・そう思えたら楽になった
ルリ子:・・ほんとに?
雅喜:あぁ
ルリ子:ほんとにほんと?
雅喜:ふっ(笑)言わせたいのか




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雅喜:あぁ、君に会うまでは。




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ルリ子:それも勘違いじゃない?幻じゃない?
雅喜:わからない




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ルリ子:そうよね。偽物か本物かなんて、実は特に意味はない
雅喜:あぁ。




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雅喜:自分が信じるか信じないかだけさ
ルリ子:信じる?
雅喜:あぁ。
ルリ子:・・あたしを信じる?




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雅喜:あぁ。




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ルリ子:時間が無い、今から相手変えてる暇もない、あたししかいないから信じる他ない。なんていう事じゃなく?




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雅喜:うん・・突き詰めるとそういうことかも・・




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ルリ子:うんじゃねぇよバカぁ!




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雅喜:おい!俺脳腫瘍だぞ?
ルリ子:ふふ(笑)死ぃーねぇー・・
雅喜:まだ死なねぇ(笑)
ルリ子:死なせねぇよっ(笑)




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雅ル:ふふふふ(笑)




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なんとかピアノを弾き切り、安心しきった表情を見せる雅喜。




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みんなからは盛大な拍手が沸き起こる。




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雅喜:俺、まだ死にませんから!!
弥生:・・雅喜・・
所長:そうだよ、戦え。病気なんかに負けんじゃねーぞ!




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雅喜:いぇ~!
所長:はははは(笑)
ルリ子:あたしが!死なせませんっ!
雅喜:おぉ~(笑)
三枝:ルリちゃん。探そう、オペをしてくれる医者を。私は医師学会にも顔が効くんだ
ルリ子:あっくんありがと!いえーい!




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雅喜:いえ~い!ははっ(笑)
百瀬:私たちも、応援するよ




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雅ル:いえ~いっ!!(笑)
雅喜:・・・おいクルミ!何泣いてんだよ!
クルミ:バカじゃね?みんなバカじゃね?(泣)




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雅ル:ばっかでぇ~~すっ♪
皆:はははは(笑)
クルミ:・・つかここ、主題歌なるとこじゃね?




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雅ル:いえ~い!!(笑)




君の笑顔今も消えないから、



自分の生い立ち、生き様、そして病気の事。包み隠さず全てを打ち明けた雅喜の表情は生き生きとしていて余命わずかとは思えないほど。

ルリ子の部屋の回想シーンでは、本当に怖いものなしというような二人の姿。病気であることも笑いに変えて、二人で寄り添い笑い合う姿はとても幸せそうで。

彼女が現れるまでは死に怯え、何もかも誰もかれも信じず、ただただ茫然と生きていた雅喜。そんな二人が出会って、今がある。存在して欲しいと思うことと、存在しているということはまるで違う。だけど二人が出会えたことも、今こうやってお互いを信じ合っていることも幻ではなく、間違いなく「奇跡」が存在しているからだよね。


24話へ続く。