冷え込んできた時期に、さらに寒そうな一冊を手に取りましたよ!!笑
ふるさとが北国なので、たま〜にしばれる寒さが懐かしくなるんですよね。
こたつに入ってぬくぬく温まりながら読みました。笑
マーセル・セロー『極北』は、荒廃した街でひとり孤独に暮らす主人公が“希望”を求めてさまよい続けるサバイバル小説です。
主人公のメイクピースは、アメリカからロシアのシベリア地域へ移住した開拓民一家の子どもでした。
両親は都会の騒がしさに疲弊し、新たな土地に希望と期待を持って入植してきたのですが、現実はそう甘くないことを思い知らされます。
はじめは開拓民同士助け合って暮らしていたのですが、災害や疫病、飢えなどにより秩序が乱れ、街はどんどん絶望的な状態へ陥っていきます。
荒くれ者が街を襲い、住民は暴徒化し、いつ襲われるかわからない恐怖が蔓延し……そうして街は活気を失い、荒廃していったのでした。
メイクピースはこの街の警察官としてパトロールを習慣にしていましたが、この街のただひとりの生き残りとなってもその習慣やめずに続けていました。
この街は一年のうち10ヵ月は雪に覆われる極寒地域。メイクピースは飢えと寒さをしのぐ材料集めのために、また外敵から身を守るためにパトロールを続けていましたが、ある時本屋の窓辺に人の姿を発見し……。
希望がことごとく打ち砕かれた街で、淡々と生き抜きささやかな希望を灯すメイクピースの頑強な姿が強く印象に残る物語でした。
この物語は四部構成、400ページほどの長編小説ですが、先程述べたあらすじは冒頭20ページぐらいの部分でしかありません。
ここからメイクピースの壮絶なサバイバルストーリーが展開されていきます。
想像を超える絶望、絶望の先にあるちょっとした希望、そして再び絶望……メイクピースよりもわたしたちのメンタルの方が先にやられてしまいそうな怒涛の展開が押し寄せてくるのです。
しかしページをめくる手が止まりません。
それはこの物語の非日常的な世界観にすっかり没入してしまったから、早く読み終えてサバイバルから解放されたかったから笑、人間の弱さと愚かさを痛感させられながらもメイクピースという人物に魅了されたから……という、いろんな思いが絡み合ったからでした。
また、この物語にはミステリー要素もスパイス的に込められていたので、メイクピースの正体や物語展開にしばしば驚かされながら読み進められて、とても充実した読書時間を過ごすことができました。
この物語を読んで感じたのは、希望とは「ちょっと先の未来を考えられること」なのではないか、ということです。
この物語では、明日死ぬかもしれないような極限状態に追い込まれた人々の姿が描かれます。
絶望のなかに追い込まれれば、一日を、その瞬間を生きることに精一杯で、人は未来のことなど考えられない……。
反対に、なにかのきっかけで「ちょっと先の未来を考えられる」ことができたら、人はその未来に向かって進む気力が湧いてくる。
そんなことをこの物語で読み取ることができたのです。
この物語を最後まで読み終えたとき、わたしのなかには絶大な安堵感と達成感と、“希望”がもたらした高揚感につつまれてしばらく呆然としてしまいました。
極限状態に突き落とされたうえでの“希望”は、こんなにも人を奮い立たせるものなのか、ということを感じて胸が震えました。
また、この物語には原始的な生活に憧れた都会の人々の皮肉や性善説と性悪説の論争、追い込まれることであらわになる人間の弱さと愚かさも丁寧に書き込まれていて、サバイバルの行方を見守りながらしばしばハッとさせられました。
人間の弱さ愚かさと生命力の強さの両方を強く感じられる小説はなかなかないのではと思います。
サバイバルな世界観に没頭させられた名作でした。
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