こんばんは~!





今年もこの季節がやってきました~~!!!!
12/16の候補作発表と同時にすべて買いました。

趣味で芥川賞・直木賞予想をはじめて5回目(3年目)になりますが、
自分の「推し本」が見つかったり、予想が当たったり、外れたり、毎回いろんなドラマがあって本当に楽しいです。

今回もどんな傑作に出会えるのか楽しみで仕方ありません。

年末に向けて仕事も読書も追い込み時期になりましたが
なるべく自分のペースで楽しく読書をしていきたいです。

ということで
さっそく直木賞候補作の一冊目を読みました。


川越宗一『熱源』(文藝春秋)

明治維新後の北海道、そしてさらに北の小さな島・サハリン島(樺太)で生き抜いたアイヌ民族の苦楽と「熱」が描かれた物語でした。

アイヌ民族とは、言わずもがなかもしれませんが、北海道、サハリン島の先住民族です。

彼らは日本とロシアからの文明が流れ込むことにより「故郷」を追われる身となり、苦境を強いられる日々を過ごします…。

当時、北海道では日本の屯田兵による開拓がすすみ、サハリン島では日本とロシアで領有権を争っていた時代。

二つの国に揺さぶられる形となったアイヌ民族は、少数民族であるがゆえにこの流れに逆らえず、これまでの暮らしを変えざるを得ませんでした。

物語の中心人物は、アイヌ民族の少年・ヤヨマネクフ。
彼は北海道で日本の教育を受けさせられながら、自分のルーツであるアイヌ民族への思いを熱くします。

日本人には良い人もいるが、公然と「未開で野蛮」だとアイヌを差別する人もいる。

差別に怒りを覚えながらも、ヤヨマネクフはアイヌがアイヌとして生き抜くためには大きな壁が立ちはだかっていることを成長とともに体感してゆくのです…。

アイヌ民族の思いは別の視点でも描かれます。

冤罪に近い形でサハリン島に送られた流刑囚・ブロスニワフ・ピウスツキは、強制労働のさなかでアイヌ民族と出会い、異民族の暮らしに興味を持つようになります。

数少ない免業日にピウスツキはアイヌ民族の居住地へ行き、交流をはかっていくうちに彼は「人種に優劣はない」ということを確信します。

当時ロシアではヨーロッパ人種が優勢であるというヨーロッパ中心主義が根強く、ピウスツキはこの考え方と戦争の愚かしさを改めて感じ、さらに民俗学に没頭していくのです…。

民俗学に出会ったことで、ピウスツキの人生はその後大きく変わります。

流刑囚の立場からアイヌ民族学の第一人者となったこと。アイヌの妻をもち、サハリン島がもう一つの故郷となったこと。

後にピウスツキはヤヨマネクフと出会い、アイヌ文化を絶やさぬために学校設立に尽力するようになるのですが、時代の波が彼らを残酷な形で離れさせます…。

ピウスツキは第二の故郷となったサハリン島のことを「熱源」だと表現します。

囚人だった自分に、第二の人生を与えてくれた地。
絶望の日々のなかで、アイヌ民族と出会ったことにより灯った自分のなかの「熱」は、その後の人生を大きく変えるほどに強力なものとして働いているのです。

北の大地に灯った熱は、人と言葉を介してじりじりと広がり、そして読み手であるわたしたちにも伝えてきます。

アイヌがアイヌとして生きてきた「熱」を。
アイヌと出会い、第二の故郷として過ごしてきた男が誰もが堂々と生きられる世界をつくるために奔走した「熱」を。

この「熱」に引っ張られるように、のめり込んで読みました。

読みながら、わたしも自分のルーツを思い巡らせます。
わたしは北海道出身ですが、アイヌのことはほとんど知りませんでした。

正確に言えば、知ろうとしていなかったのでした。

読みながら、知らないことがたくさん出てきて胸がちくりと痛みます。

自分が育った地名や何気ない方言の語源はアイヌ語で、自分の思った以上に身近なところにアイヌ文化があって、だからこそ歴史をほとんど「知らない」ことに愕然としてしまいました。

この物語の「熱源」という言葉の力強さ、秀逸さが印象強く残ります。

北海道出身のわたしの「熱源」は間違いなく東京です。彼らの熱量と同じように語ってはいけないのだろうけれど、それでも自分の「熱源」を大事に生きていこう、とやはり思ってしまったのでした。

アイヌ民族の「熱」に震えた傑作でした。


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