この世は呪いの言葉で満ちている!!
 
月に入ってからこんなことばっかり思っていた。
まだ8日しか経っていないのだけれど、1日からがくーっとくる出来事が続いて、とにかくもう打ちのめされたような気分だったのだ。
 
もうすぐ誕生日が来るから「人生を前に進めなきゃ!」と焦っていたのかもしれない。
花粉症がきて、鼻がつまってぐっすり眠れなかったからかもしれない。
冬から春に変わる最中で、身体が変化に追いつかなくて疲れていたのかもしれない。
人生を変えるくらいの大きな目標を立てていて、それが思った以上にプレッシャーになっていたのかもしれない。
 
「がんばらなきゃ」
「ちゃんとしなきゃ」
「努力」「継続」「目標」「ノルマ」
「諦めるな」「コツコツ」「愚直に」
「できない」「上手くいかない」
「なんで」
こんな言葉が頭の中をずーっとぐるぐる巡っていた。
余裕がなくて、やっていることはなんか空回っていた。
 
上手くできない自分が許せなかった。
上手くいかない歯がゆさを我慢できなかった。
 
この思いをどこかに発散したくてこのブログを書いた。ほんと、自意識過剰……(笑)
 
このタイミングで西加奈子さんの新刊が出て、ほんとに、すごく助かった。
 
サラバ!』で完全に心をつかまれてから、つらい時は西加奈子作品を読むようにしている。
西加奈子作品全体に感じる、「許す」雰囲気が好きなのだ。
 
西加奈子『おまじない』は、何かに“とらわれている”女性が登場する8編の短編集だ。
 
女の子らしさにとらわれる子、
自分の外見にとらわれる子、
いい子でいることにとらわれる子、
あねごキャラにとらわれる子、
恋人にとらわれる子、
りっぱな母親にとらわれる子、
演劇にとらわれる子、
おばあちゃんのおまじないにとらわれる子が登場する。
 
彼女たちはとらわれるものに対して素直にぶつかり、健気に苦しみ、傷つき、悲しみ、疲れ、諦めている。
自分はブスだと開き直るあねごとか、自分が心から好きだと思える演劇とか、とらわれるものはわたし自身のことだったりわたしが「これがいい」と選んだことだったりする。
わたし自身のルーツが強く影響しているのだから、とらわれてしまうのも仕方ないのだ。
 
なんとか生きていける日もあればとらわれるものに押しつぶされそうになる日もあって、彼女たちも冒頭のわたしみたいに、ぐるぐる考えごとをする。
 
いま現在押しつぶされそうなわたしは、早くすべて読み切りたくてかなり飛ばし気味に読んだ(ちゃんと全部読んだけれど、かなり食い気味に読んだ、という感じ。わかるだろうか?)。
各編に、いい感じに「おまじない」がかけられていた。
 
ああ。
今回も呑み込まれた、と思った。
そうだね、言葉は燃やせない。
久しぶりにいちご食べたいなぁ。
わたしも「がんばってるわたし」に疲れて、楽になりたかったのかも。
そうそう。誰かに煙たがられていても、誰かひとりが笑ってくれたらいい。
綺麗な文章だなぁ。
いつか妊娠したら、もう一度読み返そう。
わたしもひとりっ子だから、脳内演劇やってたなぁ。
おっさんの言う通りや。
 
「まじないや縁起なんてな、自分で決めるもんやねん。だってな、自分が幸せになるためのもんやろ? それに囚われるのはおかしいやんか。」(226頁)
 
そうだ。
わたしは何のために頑張っていたのか、やらなきゃと気を張っていたのかというと、わたし自身が幸せになるためだった。
 
引用の「おっさん」の言葉は、さらにわたしの心を救う。
わたしは、上手くいかないわたしを「許せる」わたしでありたいと、素直に思えるようになった。
 
読み終わって、肩が、身体が一気にほぐれたような気がした。
「大丈夫」「なんとかなる」と、この本に言ってもらえたような気がした。
 
わたしも、呪いではなくておまじないをかけられるような人間になりたいと思った。
 
おまじないの「効いてんのかどうかようわからん」感じが、かけられる側は心地よい。
 
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西加奈子さんの個展に行ったのがもう一年前……!
あの時のどきどきは未だに忘れられない。

装画がほんとうに素敵。





物語だけでなく、美術作品としても楽しめるおいしい一冊です!!