いやぁここ最近ジムニーSJ10が公道復帰も終わり、休みで空いた時間がある度ずっとジムニーに掛かり切りで、天気が良くて出掛けたくなる様な日でも黙々と車庫で作業していた日々が嘘の様です。
K1200GTのフォークオイル漏れも直さないといけないし・・・、でも暫くオイル漏れとかそういうのは触りたくないし(笑)
手隙で且つ簡単に何か進められる事でも無いかなぁと見回してみたら、ありましたよ手頃な物件が!
そう、ヨタハチの燃焼式ヒーターです!
燃焼式ヒーターとは空冷エンジンの様にヒーターの熱源となる物に乏しい構造を補う為に、自ら燃焼する構造を持つ事で空冷エンジンの欠点を補うヒーターです。
早い話が車用のファンヒーターですね。スバル360や初代ジムニー等、空冷エンジンが当たり前だった昔の車は燃焼式ヒーターを搭載する事で水冷エンジン以上の暖房力を得る事が出来ました。
ヒーター自体の燃料は専用の灯油タンクを用いたりして灯油を焚くタイプも多かったのですが、トヨタスポーツ800ことヨタハチはデタッチャブルブルトップを外してオープンで走行する前提の元に強力なヒーターをエンジン燃料であるガソリンを使用する事で別途燃料タンクを必要としないコンパクトなユニットを搭載する必要性があった為、海外ではVWワーゲン系等でもメジャーなガソリン燃焼式ヒーターが採用されました。
よくヨタハチのヒーターは危ないから使い物にならないとか、使うと燃費が極端に落ちてしまうとか、ネガな情報が飛び交っており且つそれらが本当だとまことしやかに語られております。
確かに過去デンソー製燃焼式ヒーターの火災事故発生事例はありますが、ヒーターを着火したまま枯草のある駐車場に停車しておいたとかウエスをヒーターの上に置きっ放しだったとか、およそそれはダメでしょという誤った使い方によるものが殆どです。
ちゃんと整備されている燃焼式ヒーターは普通に使えますし、間違った使用方法で無ければ火災を起こす事は先ずありません。
そこでジャンク品レベルの純正デンソー燃焼式ヒーターを再生していき、文句の無い仕上がりと本来のポテンシャルを常に発揮出来るレベルまで再生し、ヨタハチのヒーターの実力を世の中に認知させたいと思います。
コンセプトとしては
1.昨今の部品価格上昇から敢えて反発して出来るだけ安価に直す
2.オリジナルに拘らず互換性のある部品を有効に使い、1つの完全な動作をするヒーターを組み立てる
3.よって外見は基本的に未再生風の仕上げではなく、某宇宙一のヨタハチショップで仕上げたボディでも
見劣りしない仕上げ(外観の補修)を行い、機能は当然それ以上を目指す
再生予定のヒーターはこちら。
写真で見る限りはそのまま外装を磨き出せば未再生風な仕上がりも望めなくもない位の様に見えます。
確かにそれも可能ですが今回は綺麗な仕上がりを目指します。
よく燃焼式ヒーター本体もヨタハチ用ではなくパブリカ用(ケース、ヒータ形状とダクト、エアの形状が違う)も多い中、ヨタハチ専用のヒーターでエルボタイプのダクト、エア×2や、意外と欠品して困る燃焼炉用のパイプインレット&パイプアウトレットも幸い付属しております。

先ずは肝心のヒーター本体。
品番は87310-10030とヨタハチ用ヒーターとしては初代のタイプになります。
特徴としては放熱量が1800Kcal/H、燃料消費量0.28l/Hです。
その後のヒーターは放熱量が500Kcalアップし、それに伴い燃料消費量も0.32lになります。
この性能から見てもヒーターを使用しても1時間あたり0.3lのガソリン消費量なんですよね。まぁ当時としては機械式のギミックで動作させる方式としては優秀な部類だったでしょう。現在の燃焼式ヒーターは可変式の燃焼コントロールが出来るので最小で0.1l/H程度の燃料消費量ですけれどね。
デンソー製燃焼式ヒーターを3時間連続燃焼させてガソリン1リットル消費する計算になります。当然走行用燃料を使うので使用していない時に比べたら燃費は当然落ちますが、ヒータを使うとリッター当たり5キロしか走らないとかいう輩が言っているのがどれだけ当てにならないかが分かると思います。
リッター当たり25キロ走るヨタハチであればヒーター使用時にはリッター当たり16.7キロ前後の走行となりますので、リッター当たり5キロって何だよ?って感じですね。

ヒーター本体は最古タイプですが、搭載しているリレーは4極タイプでした。
でもヒーターハーネスがその後の4極タイプとは異なる初期のタイプとなります。本来であれば端子部分に4極全部を覆うゴムカバーが付きます。


リレーを留めるのも後年の物は大きなプラスねじですが、これはナット留めになります。
本来このタイプのヒーターは4極リレーでは無く3極リレーが付きますが、3極リレーは後ろ側の端子部分にリレーを留める台座やケースを留めるのと同じ鉄板ビスが2つ付きます。
これは後年の4極リレーを付ける為に新たに台座に穴を開けられたもので本来の付き方ではありません。

パイプ、フューエル(オーバーフロー用)も後年のバンジョータイプで無く、一般的なジョイントタイプになります。

背面の程度はまぁ其れなりでしょうか?錆の出方からいって車両が廃車になって暫くの年数は共に放置状態だった様ですね。

バルグヘッドに付くアダプタ、エアダクト。
お約束で縁が歪みまくりです。何故縁が歪むかと言うと上の写真右側に写るガスケットがピッタリとバルグヘッドとジョイントに張り付いてしまうので、これをいざ車体から外す際に力を入れてジョイントを外そうとすると、元々薄板で構成された造りの為に簡単に歪んでしまいます。
まぁこの程度なら簡単に直せるでしょう。パイプ内の歪みも極論ではそのままでも暖気送りパイプを付ければ見えなくなってしまいます。


ダクト、エア
これはエンジンルーム側と室内側で2個必要となります。
特に1個はダクトを留めるバンドや内側にガスケット、エアダクトが綺麗に残っています。
もう1個はバンドが欠品ですが、これは他のジャンクから移植でもしましょうかね?
初期のタイプは全てワイヤータイプのバンド、後期型は内2本がダクトと同色の板状のバンドに変わります。

パイプ インレット&パイプ アウトレット
意外とこのパイプが欠品している場合が多いのです。初期のタイプはこのパイプ類が銀色塗装で後期になると黒色塗装されています。正確な切り替え時期は不明ですが一般的に車体のマイナーチェンジ頃かそれより前の42年には変更されていたかも知れません。

このヒーター群と共に入っていたヒータースイッチ。
Hノブだけ見ればヨタハチ用に見えますが、これはパブリカ用です。
後述しますが燃焼式ヒーターの場合はオン、オフしか動作が出来ません。スイッチにレジスタが付くというのはブロワーモ―ターの風量切り替えの為です。

ヨタハチ用のヒータースイッチはこちら。
単純に電源をオン・オフするだけのスイッチに、ヒーターケース内のダンパーを切り替える為のワイヤーがスイッチ後端に付く構造の為、奥行きが長い特別な造りとなっております。
左側が前期のHタイプ、右側が後期の絵柄タイプです。ワイヤー保持部分の受け金具の造りも若干違いがあります。どちらもあるので室内側は前期でも後期でも対応可能ですね。
欠品なので当方の手持ち部品を使います。これも再生決定です。



パッと見た中で欠品はスイッチ自体を付けるコントロールパネルとその横に付くパイロットランプ、そこへ繋がるハーネスやヒーター本体と燃料フィルタ側から繋がるフューエルパイプとマグネットバルブですかね・・・。
他のジャンクを漁ってみると・・・。
過去にサムスィングから購入していたヒーターワイヤーとハーネスが出てきました。
ワイヤーは芯線を束ねたタイプではなく、太いワイヤーが一本のタイプです。
ヒーターダクト側の取り付け部分とスイッチ側の受けが特殊な為、一品で作って貰えなくもありませんがこの様にあればその分再生が楽なので使いましょう。
ハーネスはねぇ・・・。あの頃は若かったなぁ(笑) こんなんで当時14000円良く出したなぁ。
ちょっと当方理想のクオリティには程遠くこれを使う気になれませんので、これは取り敢えず保留します。

ワイヤーはこの様な感じで付きます。
固定はコッタピンを使います。
ダクト側はシャフトを動作させる為にワイヤーへ冠を2個付けた形状です。


フューエルパイプのジャンクも出てきました。
片側のエンド部分が折れていますが、ジョイントは規格品なので再生可能でしょう。
パイプだけなら一品で製作して貰う方が寧ろ簡単かも知れませんね。

同じくジャンクから発掘した後期タイプのダクト、エア。
バンドはあるので前期のヨタハチに載せるのならこちらを室内側へ、後期のヨタハチに載せるのならエンジンルーム側に付ければ年式的な外見に合致します。
これも再生予定ですね。

さて-10030のこの初期型燃焼式ヒーター。
たかが500Kcalの差かも知れませんが、カロリーは少しでも高い方がデタッチャブルブルトップを外して冬に粋なオープン走行を楽しめるでしょうね。
という訳でもう一つジャンクのヒーターを引っ張り出してみます。
これはヨタハチで広く使われている-10032ヒーター。前述している通りスペックが2300Kcalで燃料消費量が0.32lのタイプです。


フューエルパイプ(オーバーフロー用)は一般的なバンジョータイプとなります。
このパイプの先にはフェンダ、フューエルパイプという泥除けが付きますが、別に付いていなくてもヒーターの使用には問題無いので、それはボチボチ探せばいいでしょう。


ヒーターワイヤーハーネスがメインしか残っていませんが、製造が42年のタイプです。
見た目はババチイですがハーネスそのものはしっかりしているので、クリーニングだけでも充分に使用に耐えますね。

この-10032が世に一番出ているヒーターなので、今後の維持や基本性能を考えるとこの-10032をベースに仕上げるのが一番の様な気がします。
次回は本体をバラシてモ―ターや燃焼炉の状態を確認してみたいと思います。