仮面ライダーキバ第1話、紅渡が本編で初めてキバへ変身するシーンって最高じゃないですか?

 

それまでファンガイア関連のシリアスなシーンもあれどコメディ色が強かった仮面ライダーキバ第1話において、素晴らしき青空の会としての正体を現した恵とファンガイアとの死闘が始まり、高所からの落下をワイヤーによって回避するなどの迫力あるシーンを描きつつも、やがて窮地に陥る恵。

 

 

そんな時───渡(演:瀬戸康史氏)が現れた瞬間に空気が変わる。

 

 

歩く渡が手前の太い鉄骨と重なります。

この鉄骨が交差していて、少し十字架のようにも見えるのも良い。

(何なら太い鉄骨でなくとも窓枠も十字型です)

 

十字架と言えば、仮面ライダーキバの世界観と密接な関係にあるものですよね。

あと単純に渡と交差した鉄骨が重なるのがカッコいい。

 

 

廃工場のガラス越しにスローで歩く姿が映る渡。

あくまで直に映すのではなく、ガラス越しでの登場という渋さ。

それも廃工場という退廃的で、どちらかと言えば不気味な建物のガラス越し。

 

 

そのガラスの手前を無言でゆっくり横切って来るキバット。

 

 

渡もキバットもそれまでの1話においてコメディ色の強い存在でした。

特に渡なんて、「お化け太郎」。

主人公なのに近隣住民にそう呼ばれている程の変人扱い。

晴れなのにレインコートを羽織り大きなゴーグルにマスクにニット帽という怪しすぎる服装で本編初登場を果たし、(バイオリンのニスの材料にするためという理由が実はあったものの)猫の餌を狙ったりと奇人すぎる振る舞い。

 

そんな怪しい渡と行動を共にしているこれまた正体不明の存在、キバット。

人外な上に陽気でよく喋る。常識的な存在ではない事だけは確かです。

 

そんな2人だったのにも関わらず、2人が現れた瞬間に恵とファンガイアとの激しい戦いの空気感から一転、静寂さを放つシリアスな空気感になる。

ピリッ・・・と明確に空気が変わるのです。

 

 

このシーンを初めて見た時、「平成ライダーだ・・・!!」と強烈に感じたのをよく覚えています。

言葉にはできませんが、この感覚は"平成ライダー"だ!!、と。

一転する空気感とガラス越しに映す演出の格好良さに痺れながら「これぞ平成ライダーだ!!」と強く感じられた事自体への喜びもがこみ上げていました。

 

具体的に仮面ライダーキバまでの8作品の内、どの平成ライダーらしさを感じたのか、と言われると分かりません。ただ、纏う空気に平成ライダーとしてのオーラ、のようなものを強烈に感じたのです。

 

 

またこのシーンで渡の出現と同時に流れ出すBGMも最高なんですよ。

「変身の予感」という名前の楽曲です。

サンドトラック1の8曲目に収録されていますので、この曲が好きという方は是非サントラを借りたり買ってみて下さい。

 

 

自分はキバのサントラを買う時、このシーンで流れ強烈に印象に残っていた同曲を聴くのもとても楽しみでしたし、実際に何度もリピートして聴きました。

他の曲もいずれも素晴らしいので何度も何度も聴きましたが、この曲は特に繰り返し聴いた一曲です。

BGM自体の素晴らしさはもちろん、聴くだけでこのシーンに痺れた感覚が思い出せます。

 

 

そんなBGMの不思議な音色。少し不気味にも聴こえる旋律。

そんな音楽が流れる中で現れた渡とキバット自身が謎の存在で、これから何をするのかも分からない。

曲調と登場人物のシチュエーションが合致しています。

 

また、音楽無知なので断言はできないですが、おそらくこのBGMはパイプオルガン、少なくともパイプオルガン風の音色ですよね。

パイプオルガンと言えば、本作「仮面ライダーキバ」の世界観を象徴する要素の一つと言えるでしょう。

 

中世ヨーロッパ的なテイスト。

教会で用いられる楽器の象徴。教会とは、神のための施設(素晴らしき青空の会)。

連想されるのはステンドグラス。

 

パイプオルガンは仮面ライダーキバの諸要素を含み、繋げていると言えると思います。

それが「お化け太郎」と呼ばれていた言動や服装から一転、鋭い表情をした紅渡の歩みと共に鳴り響く。

 

映像とマッチしているだけでなく、こうして言葉にすると、これから起こる「キバの登場」や「お化け太郎からキバへの変身(変貌)」といった事象の予兆としての音楽にも思えます。

 

 

次の映る渡のカットは背中です。

ガラス越しではないものの、顔は映されず、何か得体の知れなさが出ています。

このシーンで初登場な訳では全くない人物を改めてこうしてミステリアスな映し方をする事で、今まで見ていた渡とは別人のようだ、というような感覚がします。

 

 

歩みを進めるとガラスに反射したフレアが渡の真横に現れるのも美しくて好きです。

ここでも渡の歩みはスローで映されるのでお化け太郎と打って変わって悠然とした雰囲気、そして何処かミステリアスな雰囲気がします。

 

 

続く渡のカットもこれまた直には映さず。今度はガラスに反射した像です。

しかし最初の廃工場の窓越しのカットは遠景でしたので、今度は距離が近づいた。

この少しずつ渡に接近していく、渡の変身へのベールが剝がされて行くような演出も良いです。

 

 

そして今度もそれまでの陽気さとは一転、無言なキバットの登場。

渡に付き従う様に飛んでいるものの、渡本人と一緒に映る訳ではない。

この敢えてすぐに2人を並び立たせない演出も好きです。

 

しかし一緒に映っていないように見え、先ほどはガラス越しに渡が見える位置を飛んでいたのが、今度はガラスに反射した渡の像の隣を飛んでいる。

つまり映像上でこそ一緒に映っていないものの、実際はこのキバットの横を本物の渡が歩いている。

この表現も好きですね。

 

また、おしゃべりだったキバットがさっきから無言で飛んでいる。

この点からも緊迫感がします。

 

 

そしてパイプオルガンの音色が響く中でのガラス越し演出やガラスの反射演出。

パイプオルガン+ガラスはステンドグラスを連想させてきます。

ステンドグラスと言えば、ファンガイアです。

まるでキバの鎧の性質(出自)や渡の正体を暗示しているかのようにも思えます。

 

 

そしてそれまでの渡とは別人のように打って変わって、実に堂々とした歩みで真っ直ぐファンガイアの下へ進んで行く渡。

オドオドしていたり内気だったり弱気だったり打たれ弱かった渡と同一人物とは思えない歩みと表情に、こちらの身も心も引き締まりつつも惹きつけられます。

 

 

ここの歩く渡を最初は高所から撮っているのが、渡の「キバット!」の呼びかけと共にノーカットでそのままググっと下へ降りてきて渡の目線の高さに合う流れもカッコいいし、空間の広がりと迫力が感じられて好きですね。

その際に「おう!」と答えてからのキバットの動きも好き。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カメラの手前からグイっと渡の隣へ飛んでいくキバットも、このカメラの動きにダイナミックさを出していて好きです。

 

 

キバットの恒例となる「よっしゃあ!キバって行くぜ!」と共にあおり視点へ!

ここに来て遂に渡の顔がハッキリと、そしてすぐ近くから映ります!

 

 

ここで渡が力強く片手を掲げキバットを掴むのがカッコいい!!

「う、うおおおおおお!!今までの渡と違うぞ!!」というのが伝わってきます!

 

 

そして1年に渡りお馴染みとなる変身シーン。

キバット開口

 

 

左手をキバットに噛ませる

噛まれた手に亀裂のような線が走るのは昭和ライダーが持つ怪奇要素っぽくもありますね。

 

 

渡の首から顔にステンドグラス状の紋様が這うように浮かび上がる・・・!

 

 

いやあ、これも昭和仮面ライダー伝統の怪奇要素っぽいとも言えるんですが、

それ以上に美しさとカッコ良さを感じるな。。

 

 

あとどこかキバ飛翔態っぽさも感じる。。

赤と黄色が多い色味と紋様の柄が、飛翔態の色や腕部分の紋様を思わせるのかな。。

 

 

 

何重もの鎖が渡の腰に巻き付きベルトとなるのも雰囲気に合っていて、初見時は「なるほどそう来るか!」って印象だった気がします。

番組キャッチコピーでもある「運命の鎖」に巻き付かれているようにも見えます。

 

 

そして鎖がベルトへ・・・

 

一瞬だけ鎖の銀色をしてるベルトもこれはこれで良いですね。

 

 

すぐに本来の色へ。真紅のベルトが美しいです。

 

 

この間も左手をキバットに噛ませる構えを取り続けてるのがカッコいい。

 

 

一気にキバットを力強く前へ突き出すと同時に「変身」!

シンプルながらカッコいい動作です。

お化け太郎とのギャップもあって別人のように凛々しい。

 

そして初変身が歩きながらというのもかなり珍しいのでは?

 

 

直後、キバットの足をベルトの止まり木へ捕まらせ・・・

 

 

ベルトへ固定!

ここの足を掴まらせてからガシャっと固定するまでがスムーズで気持ちいいんですよ。

キバットの眼が赤いのもカッコいい。

 

 

キバットを中心に赤い輪が広がる・・・

 

 

うーん、カッコいい。

まるで音波のようで、「音楽」がテーマのキバに合ってます。

 

 

その中で「キバの鎧」に包まれていく。。

 

 

キバの姿が象られて行く。。

「キバの鎧」を纏っている訳ですし肉体変化系ではなくどちらかと言うと装着系だと思いますが、メカチックなライダーが多い平成ライダーにおいて、なかなか生々しく見える変身です。

というか実は昆虫の蛹のように、覆った中身(肉体)を変質させて鎧型に再構成させる形でこの姿になっている、なんてことはないでしょうか。

凄く昆虫の変態っぽく見えます(昆虫だった初代仮面ライダー要素と言えるかも?)

 

 

体を覆った銀色が弾け飛び、キバが姿を現す!!

鎖が腰に巻き付く→全身が鎖色の物質に覆われる、を経てのこれなので、

運命の鎖を解き放っているかのようにも見えます!

額の魔皇石が緑に一瞬強く発光するのもイイ!!

 

 

キバの姿に変わったと同時に中腰になり駆け始めるこの臨戦態勢さ!!

もう一切の抜かりなく戦いへと疾走する!って感じでカッコいいです!

そして眼の発光は落ち着きつつも、額の魔皇石がまだアクセント的に強く輝いてるのも良い!

 

そして重ねて言いますが、初変身と同時に駆け出す、初変身が駆け出しながら、というのはかなり珍しいのでは?

ここにも特別性を感じた様な気がします。

 

 

このマッシブさ・・・!

あの「お化け太郎」が!?こんなマッシブでロックな外見に!?

しかも変身完了と同時に標的へ向かって駆け出すような気質に!?

 

更に駆け出すと同時にBGM「キバフォーム」が鳴り出します。

上記サントラの2曲目に収録されている曲です。

 

 

このBGM「キバフォーム」はクラシック音楽であるショパンの「革命」のアレンジだそうです。

言われて聞き比べてみると、音楽無知なので最初は「・・・え?どこら辺が?」って感じでしたが、やがて「あっ、なるほど確かにそうだわ!!」と理解できました。

 

 

それでこの情報に纏わるネット上の書き込みで忘れられないものがありましてね。。

 

「"革命"か。まるで渡の存在のようだな」

 

みたいなものでした。

 

 

「ああ・・・・・・そうか・・・・・・そうだな・・・・・・」

 

と思ったのを覚えています。

 

存在するはずのない禁忌の存在。

許されぬ存在。

 

しかしそんな存在である渡が産まれた時。

作品内で初めて変身し戦いへと駆け出した時。

有史以来ずっと続いて来た人間とファンガイアの歴史と関係への"革命"が始まる。

 

この本編初変身時に流れるBGMが「キバフォーム」という正にこの時のキバの姿を現した曲名で、

その音楽の原曲の曲名が「革命」と。。

 

 

"時代"と"音楽"をテーマに冠した「仮面ライダーキバ」・・・

正にその存在に相応しい、運命的な、素晴らしき符号ではないですか。。。。

 

 

この第1話を監督したのは、数多くの平成ライダーの第1話を担当された田崎竜太監督です。

本当にありがとうございました。

 

 

 

ミリシタのM@STERPIECEイベントをやっていたら衝動的に制御不能で熱い炎が宿って本記事を書きたくなりました。

そもそもこのブログは最初の記事でキバ等について語ると書いたのに実行に移すのに2年半近く掛かってしまいました。

今後も不定期にやっていきたいと思っています。